世界中に行き渡る中国マネー 180兆円の外交ツール 「一帯一路」重視も勢いに陰りか

世界中に行き渡る中国マネー 180兆円の外交ツール 「一帯一路」重視も勢いに陰りか
7/25(火) 9:56配信 産経新聞


中国による主な対外投資先(写真:産経新聞)

中国マネーが世界中にくまなく浸透している実態が、米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)が13日に発表した報告書で改めて明らかになった。2005年から17年上半期までの中国による対外投資と建設工事の合計額は1兆6000億ドル超(約180兆円)。中国は先進国への投資や途上国での建設工事を推し進め、影響力を拡大させている。ただし、足下では資本流出を嫌う中国政府が対外投資を押さえ込む動きもみられ、これまでの勢いに陰りが出ているともみられている。

中国による海外での経済活動の実態は、中国の公式発表から把握することは難しい。中国政府のデータによると、対外直接投資の3分の2程度は「香港向け」。実際には香港経由で各国に資金が行き渡っているが、中国政府はその実態を公表してこなかった。

一方、AEIは最終的な投資先を割り出して報告書にまとめている。

中国による2005年以降の累計投資額を国別でみると、1位は米国の1685億ドルで全体の17・5%。2位は豪州の899億ドルで9・4%を占める。トップ10はいずれも先進国かブラジル、ロシアといった資源国。中国がIT技術や金融業界でのノウハウ、資源権益などを標的に、資金を投入している様子がうかがえる。

一方、中国による建設工事の額が最も多いのは、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」でも重要視されるパキスタンの383億ドル(日本円で約4兆3000億円)。トップ10にはアフリカやアジアの途上国が名前を連ねる。これらの建設工事のほとんどは国営企業が主体で、AEIは「建設工事を中国政府の外交ツールとして位置づけることで、収益性を無視することが可能になっている」と指摘する。

投資と建設工事を合計した額を地域別にみると、中国マネーが世界の隅々まで行き渡っている様子が浮き彫りになる。地域別の額をランキングすると、欧州、アフリカ(サハラ以南)、西アジア、北米、東アジアの順番になるが、それぞれが15%前後で大きなばらつきはない。

ただし足下をみると、中国による対外投資の勢いには陰りも出ている。17年上半期の中国の対外投資は前年同期比約9%増だったが、中国化工集団によるスイスの農薬大手シンジェンタの大型買収(約430億ドル、日本円で約4兆8000億円)を除けば、4割近い減少という結果だ。また米国への投資は約170億ドル(日本円で約1兆9000億円)まで半減している。

背景には中国政府が抱く資本流出への懸念があるとみられる。中国では15年8月の人民元切り下げを機に資本流出が加速。今年1月末には外貨準備高が2年半前のピークから約1兆ドル減少した。こうした流れを食い止めるため、中国政府は資本取引規制を強化している。

また、ニューヨークの高級ホテルを買収するなどして注目を集めた安邦保険集団の呉小暉会長は6月、中国政府に拘束されていると報じられた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国政府は安邦以外にも、今春に投資銀行大手ドイツ銀行の筆頭株主となった海航集団や、映画産業での買収で注目を集める大連万達集団などへの監視も強めている。

AEIのデレク・シザーズ氏は中国政府による資本流出抑制の動きを踏まえ、「17年下半期も中国の民間企業の動きは抑制されたままだろう」と予測。中国政府が民間企業の海外投資を促さない限りは、買収の勢いは「後退する」と分析している。

また一帯一路に裏付けられた途上国での建設工事についても先行きは不透明だ。AEIは5月に発表した報告書では「一帯一路は中国にとって資金面での重荷になっている」とし、中国が資本流出にさらされるなかで採算無視の資金投入を続けることが難しくなっていると指摘した。

中国マネーの存在感拡大は潮目の変化を迎えている可能性がありそうだ。(ワシントン支局 小雲規生)

恋愛、結婚、そして就職も諦め 韓国「七放世代」の悲鳴

恋愛、結婚、そして就職も諦め 韓国「七放世代」の悲鳴
6/25(日) 7:00配信 NEWS ポストセブン

前大統領の醜聞では若者たちの不満が爆発 Lee Jae-Won/AFLO

韓国・文在寅大統領は消防士、警察官などの公共部門で81万人の雇用を目指すという。さらにその後、公共部門「非正規ゼロ」までぶち上げた。だがそれらの財源についてはほとんど触れず、民間の雇用増に対しては有効な政策が打ち出せていない。自分たちの将来を託した新政権に、韓国の若者たちは裏切られてしまうのか。在韓ジャーナリストの藤原修平氏が、韓国で彼らに話を聞いた。

* * *
「恋愛」「結婚」「出産」「人間関係」「マイホーム」「夢」「就職」の7つを放棄した「七放世代」今の韓国の若者を表す時によく使われる言葉だ。

実はこの数年で、彼らが諦めざるを得なくなった“将来”は徐々に増えてきた。はじめは2011年頃、「恋愛」「結婚」「出産」を放棄した「三放世代」という呼び名がまず登場した。

2011年といえば、サムスンを擁する韓国が一部の産業分野で日本を凌駕すると言われるようになった頃で、KOSPI(韓国総合株価指数)が当時の最高値を記録した年だ。以降、ソウルにはガラス張りの高層オフィスビルが乱立。その一方で、2009年に80%近かった短大卒以上の就職率は翌2010年には50%台中盤まで急落した。格差社会の歪みが若者世代を直撃したのだ。当時大学生活を送った27歳の女性はこう語る。

「同級生の多くが就職留年や留学を選択し、卒業式にはほとんど出席しませんでした。私は運良く、卒業後に希望通りの職を見つけましたが、給料が安いだけでなく、毎日残業で帰宅は深夜。学生時代に付き合っていた彼氏とも音信不通になってしまいました。今は職場を辞めて、大学院を目指しています」

2014年頃になると、三放世代は「人間関係」と「マイホーム」も放棄した「五放世代」と呼ばれ、翌2015年にはさらに「夢」と「就職」を放棄した七放世代となった。この間、学生たちは友人付き合いもままならないほど、余裕がなくなっていったようだ。

現在、ソウルの中堅大学に通うパク・ジョンヒョンさん(仮名)はソウル市内の居酒屋で自身の生活をこう語った。

「バスや列車を乗り継ぎ片道2時間以上かけて通学してくることは、僕の周りでは当たり前です。自分の場合は3時間ちょっと。実家はそんなに裕福ではないので、バイトをして自分で学費を稼いでいます。バイト先は時給が良いソウル市内。家に帰るのは深夜1時近くで、それから毎日のように出される課題を片付けるので、寝るのは夜中の3時近くになります」

そこまで苦労して卒業しても、すぐに就職できるわけではない。多くの学生は卒業後、“就職準備生”となる。ソウル市内の大学で教鞭をとるキム・サンウンさん(仮名)が語る。

「就職準備生にとって、友人たちは情報交換の貴重な仲間であり、精神的な支えです。でも実際は、友人に会うよりも、就職に向けた技能習得のために予備校に通い、その学費を稼ぐためにアルバイトに勤しまざるを得ません。そんな毎日に彼らは疲れ果て、就職、そして夢を放棄してしまうのです」

民間への就職ではなく、安定を求めて公務員を目指し、専門の予備校へ通う若者も少なくない。しかし、公務員試験の合格率はわずか2%と、超難関となっている。

※SAPIO2017年7月号