日本版GPS衛星「みちびき」 自動運転にマラソンに…高精度の位置情報、活用期待

日本版GPS衛星「みちびき」 自動運転にマラソンに…高精度の位置情報、活用期待
産経新聞 5/22(月) 10:15配信


IT社会の切り札に「準天頂衛星みちびき2号機」(写真:産経新聞)

日本版の衛星利用測位システム(GPS)を担う準天頂衛星「みちびき」2号機が来月1日、打ち上げられる。地上の位置を高精度に測定する日本独自の衛星で、来年度から計4基で本格的な運用を目指す。車の自動運転などへの応用で社会に大きな変革をもたらすと期待されている。(草下健夫)

米国依存から脱却

GPSはカーナビゲーションやスマートフォンなどで広く利用されている測位衛星で、みちびきはその日本版だ。発射した電波を地上で受信し、到達するまでの時間から距離を算出して位置を割り出す仕組みで、内閣府が運用する。

位置を特定するには3基が必要で、時刻を合わせるための1基を含め計4基が基本構成となる。種子島宇宙センター(鹿児島県)からH2Aロケットで順次、打ち上げており、1号機は2010年から運用中。3、4号機も年内に打ち上げる予定だ。

米国が1970年代に開発したGPSは世界中で利用されているが、元々は軍事用だ。米国が国際紛争などを理由に利用を制限すると、各国に重大な影響が及ぶ。このため欧州などが独自衛星の整備を進めており、日本も米国頼みから脱却するため2011年にみちびきの本格導入を決めた。

精度6センチに向上

GPS衛星は約30基が地球を周回しているが、日本上空をいつも飛行しているわけではない。日本から離れているときは、電波は真上から届かなくなる。このため高層ビル街の谷間や山間部では電波が遮られたり、反射したりして、位置情報の精度低下や測定不能に陥るケースが頻繁に起きている。

そこでみちびきは、日本の真上付近(準天頂)で飛行時間が長くなる準天頂軌道という特殊な軌道を採用。静止軌道を傾けたような楕円(だえん)軌道で、地球の自転を止めた状態で考えると、衛星が8の字を描くように動く。

高度は日本上空で3万9千キロと最も高くなり、長時間飛行できるように工夫されている。日本付近の飛行時間は1基だと1日約8時間、3基以上あれば24時間態勢でカバーできるという。

位置精度はGPSだけの場合だと10メートルにとどまるが、みちびき1基を併用すると数メートルに。来年4月に4基体制が始まると1メートルになり、さらに地上の電子基準点を使い衛星の計測誤差を補正すると6センチに向上する。23年度には7基体制とし、GPSを併用しなくても6センチを実現する計画だ。

経済効果2兆円

みちびきはIT(情報技術)分野などに革新をもたらし、さまざまなビジネスや防災に役立つと期待されている。内閣府の担当者は「無人化や省力化といった次世代サービス創出の切り札になる」と話す。

農地でトラクターを無人で走らせると、従来はタイヤで作物を踏んでしまう恐れがあった。だが1号機を使って実験したところ、40センチ間隔で植えた稲の間を幅30センチのタイヤで無事に走行できた。農業の人手不足解消に活用できるかもしれない。

GPSの位置精度だと道路の車線の違いは分からないが、みちびきを使えば区別できるため、車の自動運転に役立つ可能性がある。小型無人機ドローンを使って離島に荷物を運んだり、マラソンで走った距離を正確に把握したりする実験も行われている。

3号機だけは静止軌道に投入し、災害時に役立つ機能を搭載する。被災者の安否や避難所の状況などを、通信網が途絶しても防災機関に伝達できるようにする。

政府は国内需要だけでなく、みちびきが上空を飛ぶ東南アジアやオセアニア地域にシステムや受信機を輸出できるとみており、経済効果は東京五輪が開催される2020年に2兆円超と見積もる。

宇宙政策委員会の宇宙民生利用部会長を務める中須賀真一東大教授は「アイデア次第で大きな可能性を秘めている」と指摘する。一方で、受信機を幅広い分野にどう普及させていくかなど課題もある。社会に利便性をどこまで示せるかが鍵になりそうだ。

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