世界の一流リーダーたちが「禅」に惹かれる理由 『ビジネスZEN入門』



世界の一流リーダーたちが「禅」に惹かれる理由
6/5(月) 6:00配信 ダイヤモンド・オンライン

「禅」は坐禅を組んだり掃除をしたりするなど、身体で実践することを重視するため、言葉がわからない外国人であっても、問題なく体験できる(写真はイメージです)

● 要約者レビュー

 アップルを創業したスティーブ・ジョブズや、著名なドキュメンタリー映画監督であるマイケル・ムーア。彼らが禅に多大な影響を受けていたことを知っているだろうか。例えばiPhoneをはじめとするアップル製品はシンプルで美しいデザインが評価されている。この成功要因の一つは余計なものをすべて削ぎ落とし、本質に向き合うという禅の教えを、ジョブズ氏が追求し続けたことだといえよう。

 本書『ビジネスZEN入門』では、世界の第一線で活躍する人たちが禅に惹かれる理由を解き明かし、「マインドフルネス」と禅との違いを浮き彫りにしていく。また、仏教のそもそもの成り立ち、日本のビジネスパーソンがグローバルに活躍する上で、仏教の中でもとりわけ禅の考え方を取り入れることが有用な理由などが、具体的なエピソードとともに紹介されている。読み進めるにつれて、「仏教はゲインではなくルーズである」、「禅では体験や実践が重視される」という根本的な考え方について理解を深められるうえに、これまでとは違った視点を得られるはずだ。

 著者の松山大耕氏は、京都の妙心寺退蔵院の副住職であると同時に、世界中を飛び回りさまざまな活動を行っている。世界の現状と人間の本質に向き合い続けている彼だからこその、独自のアドバイスが詰まった一冊だ。これからグローバルに活躍したいと考えている人は、世界へ飛び出す前に一歩足を止め、本書を通して禅の教えをもとに、自己と世界を見つめ直してみてはいかがだろうか。(山下 あすみ)

● 本書の要点

 (1) 仏教、特に禅の教えは、何かを得ようとする「ゲイン」の発想ではなく、積み上げてきたものをあえて崩す「ルーズ」の発想を土台とする。
(2) 禅は「実践」を何よりも重視する。禅の教えが、スティーブ・ジョブズをはじめグローバルリーダーにも支持されているのは、「余計なものをそぎ落とし、本質と向き合う」という考え方が普遍的であることを示している。
(3) リーダーシップは、論理にとらわれずに、自分の信念に沿って行動する中で自然と醸成されるものである。

● 要約本文

 【必読ポイント!】
◆世界のリーダーはなぜ「ZEN」が好きなのか
◇仏教は「ゲイン」ではなく「ルーズ」である

 著者には日本の宗教家という立場で、世界各国の政治家や実業家と交流する機会がある。そのたびに、仏教や禅の教えについて熱心に聞かれるという。世界のリーダーたちが注目しているのは、仏教の中でも特に禅の考え方である。禅は「ZEN」という言葉として、今や世界的に広く認知されている。

 なぜ世界の第一線で活躍する人たちが禅に魅了されているのか。その理由は、物質的には不自由がなくなってきているため、精神性を求める人たちが増えているからではないか、と著者は考えている。著者が強調するのは、仏教を信じたからといってすぐに何かが得られるわけではないという点だ。仏教、特に禅の教えは何かを「得る」ための手段ではなく、むしろ何かを「失う」ためのものである。仏教がめざすのは「ゲイン」ではなく「ルーズ」だ。つまり、何かを新たに手に入れるのではなく、むしろ今まで積んできたものを崩していくために、経を唱えて坐禅をする。失うとは、余計なものを削ぎ落とすことであり、それによってもっとも大切な本質に目を向けるということなのである。

 ◇禅が外国人に支持される理由

 禅に影響を受けた外国人として最も有名なのはおそらくスティーブ・ジョブズだろう。彼が禅から得た影響は、アップル製品のシンプルで美しいデザインの中に息づいている。余計なものをなくして本質と向き合う。こうした禅の考え方は、普遍的なものであるからこそ、文化を問わず多くの人の納得を得られるのだろう。

 また、禅は経典を勉強するのではなく、坐禅を組んだり掃除をしたりするなど、身体で実践することを重視するため、言葉がわからなくても問題なく体験できるのである。こうした点が、キリスト教徒やイスラム教徒にも幅広く受け入れられている理由の一つだ。

 そもそも、文字で書かれたものは受け取り手の解釈にゆだねられてしまうため、言葉で仏教の本質を伝えるのは難しいと考えられている。よって、文字や言葉ではなく体験で悟りをめざすのだ。

 ◇理屈を超えたところにある「禅」の教え

 禅を体験した外国人の多くは、「なぜこんなことをするのか」と疑問を抱くという。なぜ掃除がそんなに大切なのか、なぜ食事の作法がこんなに細いのか。論理を重んじる西洋の人々にはなかなか理解されない。

 しかし、重要なのは「実践する習慣」を身につけることだ。そうすると、一見意味のないように見えることの背後にあるものが見えてくる。一方、西洋の文化では一つひとつの行動に因果関係、そしてゲインを求めるため、禅の教えがなじみにくいという面がある。そこで、実践重視の考え方に共感できるかが、外国人が禅の世界に入ってこられるかどうかの分かれ目となる。

 食事のルール一つとっても、禅が良しとする動作はすべて考え抜かれた究極形であり、無駄なものは何ひとつない。こうして、禅の教えを実践に移す中で、理屈を超えたところで即座に反応して適切に行動できるようになるのである。

 ◇グローバルリーダーは教育では作れない

 近年、文部科学省を中心に「グローバルリーダー」を育成しようという動きが活発になっているが、筆者はこの動きに少し懐疑的だという。なぜなら、グローバルリーダーというのは、周囲がお膳立てして教育することによって生み出せるものではないと考えているからである。

 どんな分野でも、リーダーは決まった成功法則に基づいて誕生するものではない。その人がこれだと信じるものを懸命に形にしたものが素晴らしいと評価され、新たなムーブメントになっていく。その結果として、その人がリーダーとなっているのだ。

 グローバルリーダーに求められるのは、教育機関でカリキュラムを組んで学べるような技術ではない。むしろ、出会いや刺激、さまざまな人生経験を自ら積極的に積み上げていく姿勢こそが重要である。

 ◇日本に目を向け、自分にしかできないことをやる

 グローバルな人ほど、自国についてよく知っている。外国の文化に接すると、いやおうなしに自国と他国を比較する機会が生まれる。そこで初めて、自分の国や文化がどんな特性をもっているかに気づくことができる。

 海外で活躍する日本人の多くは、日本に対する愛情や思いが非常に強い。海外で生活すると自分が日本人であることを否応なく意識させられる。世界に目を向けるとともに日本にも目を向けながら、自分にしかできないことを実践しているのである。日本の文化について理解しておくことは、日本を離れて仕事をする人ほど重要になるといえる。

 ◆ビジネスパーソンに贈る「実践できる」禅の教え
◇リーダーシップをどうやって身につけるか

 リーダーシップとは、自ら意気込んで生まれるものではない。本当のリーダーが生まれるのは、周囲が「あいつがリーダーだ」と認めたときだ。リーダーとして認められる人の共通項は、「当たり前のことをきちんとできる」という点である。思い上がらずに、人としてやるべきことをやる。それによって、周囲からの信頼が生まれ、いつのまにかリーダーシップが醸成されていく。

 禅の修行では、禅問答というものがある。悟りに到達するために指導者から与えられる「公案(こうあん)」に、自分なりの考えを示すのだ。重視されるのは、論理にとらわれずに、自分自身の力で道を見出していくことである。これはリーダーシップに求められることと通じる。理屈ではなく、自分の信念に従って考え、それを実行に移す。こうした「筋を通す」という考え方が非常に大事になる。

 ◇「できない人間」とどう仕事をするか

 「できない人間」とのやりとりでイライラする経験は少なくない。しかし、それはよく考えると自分自身に原因があり、負の感情は、結局のところ自分に返ってくる。イライラするという気持ちで受け止める姿勢にこそ、自分自身の器の大きさが反映されているのだ。

 「できない人間」がいるという考え自体を改め、そうした人も組織やチームでいかに生かして、ベストなものを生み出すかという発想をしなければならない。禅の世界では、精進料理を通じてこうした考えを学ぶ。限られた食材や調味料を最大限に生かす方法を、精魂込めて考えるためだ。精進料理の心構えから学べることは多い。

 ◇失敗を引きずってしまう

 取り返しのつかない失敗をしたと感じたとき、気持ちの切り替えができず、失敗を引きずる人が多い。しかし、失敗を引きずるというのは、その失敗がそれほど大きなものではないからだと著者は考える。本当に大きな失敗であれば、大変な状況を打開するのに必死で、引きずっている時間などないからだ。

 仕事で失敗をしても、それを成長のための糧だととらえることは可能だ。「過去は変えられない」という発想になるのは、「たったいま、この瞬間」に集中できていないからにすぎない。いまできることに意識を集中させることで、気分が大きく変わってくるはずだ。

● 一読のすすめ

 本書を読み進めるうちに、禅とは坐禅などの行為そのものではなく、心構え・人としてのあり方を意味すると気づけるだろう。禅の教えは即効性のある武器にはならないが、中長期的なスパンでキャリアを考えたときに、大きな意味を持ち、本領を発揮してくれるはずだ。

● 評点(5点満点)

● 著者情報

 松山大耕(まつやま ・だいこう)
妙心寺退蔵院副住職

 1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。埼玉県新座市・平林寺にて3年半の修行生活を送った後、2007年より現職。2009年5月、政府観光庁Visit Japan大使。2011年より京都市「京都観光おもてなし大使」。2016年『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」に選出される。2011年、日本の禅宗を代表してヴァチカンで前ローマ教皇に謁見、2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談し、世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流。2014年、世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席するなど、世界各国で宗教の垣根を超えて活動中。

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