札幌大学経営学部 千葉博正教授「貨客混載輸送の可能性」 – 物流ウィークリー

 路線バスで人と物を同時に輸送する「貨客混載輸送」の取り組みが広がりをみせ、宮崎県や岩手県、北海道などではヤマト運輸と地域のバス会社が協力して運行が行われている。物流システムを研究する札幌大学経営学部の千葉博正教授は、約10年前に北海道で貨客混載輸送の先駆けとなる実証実験を行い、その効果や課題を検証した。今後の可能性について、どのように捉えているのか。

 「地方では貨物・旅客ともドライバーの確保が難しくなり、地域の過疎化、少子化、高齢化などにより、路線の維持が難しくなっているという共通の課題を抱えている。サービスレベルの維持、生産性向上などに向けて貨客混載で相互連携をはかるのは自然なこと」とする同教授は、平成19年に国の「全国都市再生モデル調査」により、輸送密度の低い北海道・栗山町で地元JRバスの協力を受けて路線バスによる少量の農産物輸送を17日間にわたり実施した。

 この実験では、バス路線沿いの4件の農家が協力し、収穫された農作物をバスに乗せて町の中心部にあるJA集荷所や直売所に輸送。バスが農家の庭先まで行き、運転者が荷物の積み下ろしまで行った。実験のため、輸送料は無償とした。

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 実験の結果、運転者が荷役作業を行ったことで最大14分の遅延が発生し、運転者の負担も大きいことが判明。また、「貨客混載をしても大量の貨物輸送は難しく、基本的に大幅な収支改善は見込めない」「地方路線バスの乗客は通勤・通学・通院など決まった時間に、決まった人数が乗るケースが多く、アトランダムな貨物需要への対応は難しい」といったこともわかり、この取り組みは継続しなかった。

 貨客混載輸送について同教授は、貨物・旅客の双方にとって経営合理化に一定の効果があるとするものの、「踏み込んで考えれば、『貨物は取引が活性化すれば需要拡大が可能』だが、『路線バスは沿線の人口などによって需要が大きく規制される』ため、基本的に輸送需要の性質が異なる二つを、うまくマッチングさせる必要がある。取り組みの拡大を図るには、もっと深く考えていく必要がある」と指摘。現状では、宅配便との混載がベースなので大きな問題は発生していないが、「将来的には、もっと多様な物流ニーズへの対応が求められるのでは。地場の細かい物流ニーズに対応しようとすれば、様々な荷主との対応や荷姿、ラストワンマイルのあり方など様々な課題が出てくる」と述べる。

 こういった課題についての解決方法は地域の事情によって異なるが、「地域全体の交通体系のマネジメントを行う運営主体」が必要になると主張する。これは行政や民間企業の問題というより、地域交通の維持・拡充と地域経済の発展について広い視野を持ち、なおかつビジネスベースで制度設計できる組織のイメージが強い。そのための運営主体が設置されれば、その地方の貨客混載輸送に見合う荷物の掘り起こしや、物流拠点と旅客の待ち合いを兼ねた共同施設の設置といった各種の施策が進み、貨客混載輸送のあり方も多様になってくると捉えている。

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