トランプ大統領の「国境税」、実現見通しは? – 日本経済新聞



 今年1月に就任したトランプ米大統領が掲げる「米国第一主義」など、過激な発言や施策が日々報道され、注目を集めている。中でも貿易赤字の拡大が続く米国の利益を守るために打ち出した「国境税」の導入は米国内外から批判と支持を集めている。国境税とは何なのか。一橋大学経済学研究科の佐藤主光教授に聞いた。

一橋大学 佐藤主光 教授 1992年一橋大学経済学部卒業。98年にカナダのクイーンズ大学で経済学の博士号を取得。一橋大学経済学研究科の講師や准教授を経て、2009年から現職。政府税制調査会委員などを歴任。「地方税改革の経済学」など著書も多数。
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一橋大学 佐藤主光 教授 1992年一橋大学経済学部卒業。98年にカナダのクイーンズ大学で経済学の博士号を取得。一橋大学経済学研究科の講師や准教授を経て、2009年から現職。政府税制調査会委員などを歴任。「地方税改革の経済学」など著書も多数。

 ――国境税とはどのようなものですか。

 「国境税はトランプ大統領が突然言い出したようなイメージがあるが、実際には2016年に議会共和党が公表した抜本的税制改革プランの中に盛り込まれている。内容は(1)法人税率を35%から20%に下げる(2)課税ベースのキャッシュフロー化(3)国境調整を伴う仕向け地主義への転換――だ。この3つめにあたる部分が国境税としてフォーカスされている」

 「簡単に言うと米国以外の企業が米国に製品を輸入した場合に課税するシステムだ。米国から海外へ輸出する場合には課税はされない。これが国境税と呼ばれるゆえんだ。現行の制度では、米企業が日本に製品を輸出する場合、米国の法人税と日本の消費税を支払っている。米企業としては『二重に取られている』という感覚だ」

 ――米企業の負担を減らすための施策なのですか。

 「国境税を導入すると、日本の消費税だけを支払えばいいため、米企業の負担は軽くなる。共和党案の概要はどこで課税するかを仕向け地、つまり最終消費地に設定している点で、仕組みが消費税と似ている。例えばトヨタ自動車が日本で造った車を米国で売ると日本の消費税がかからないが、中国の車を日本で売れば日本の消費税がかかる」

 「また、米国企業の負担軽減だけではなく、しっかりと米政府に納税させる狙いもある。米国企業が海外でためこんだ利益を米国に還元させる。米国の多国籍企業は海外子会社に利益を留保し、米国への税の支払いを逃れている現状がある。共和党案では、ため込んだ利益に課税する一方、新たな海外子会社の利益が米国多国籍企業に還流しても非課税にするとしている」

 ――消費税と似ているということですが、国境税への転嫁はどうなりますか。

 「消費税の場合、仮に海外から日本に1万円の商品が輸入された場合、8%(800円)の消費税が課される。輸入事業者は国内事業者に消費税を含めた1万800円で販売する。この税額(800円)はこの国内事業者が自身の売り上げに対する消費税を納めるとき『仕入れ税額控除』制度で還付されるものだ。つまり、国内事業者は消費税を負担しないことになる」



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