なぜ投資信託には複数の会社が絡むのか? 知っておきたい基礎知識 – 投信1



「投資信託って仕組みがわかりづらい」、「債券や株式に直接投資するより色々コストがかかる」というイメージが個人投資家の皆さんにあるとすれば、1つの原因は関わるプレーヤーが多いことかと思います。

そこで今回は、投資信託に関わる主なプレーヤーの役割を説明したいと思います。

「そんなの読まなくても知っているよ」という方も多いと思われますが、各々のビジネスモデルを認識することにより、「健全な猜疑心(sound sceptism)」を持った、より良い判断につながると思います。



というのは、個人投資家が投信を購入したり解約したりする際、商品提供や運用に関するアドバイスがビジネス上の都合で必ずしも中立とは言えない場合もあることを理解できるからです。

投資信託の主なプレーヤー

投信の主なプレーヤーには3者あります。委託会社(委託)、販売会社(販社)、受託会社(受託)です。

この3者の関係を他業種の方にイメージが湧くように例えると、アパレルであればデザインと製造担当が委託会社、ブティックやデパートが販売会社、物流が受託会社です。芸能界であれば作詞作曲が委託、歌手が販社、受託はマネージャーという感じでしょうか。

各々の役割を以下に解説します。

プレーヤー1:委託会社

委託会社は投信の商品設計、運用、基準価額の算出および公表を行います。運用という投信の中核的な付加価値を提供する役割です。運用会社とも呼ばれ、むしろその方がなじみやすいかもしれませんが、ここでは委託会社とします。

運用を「委託」するのは投資家ではないか?と思われるかもしれません。そのあたり紛らわしいのですが、市場に出るのは受託会社である信託銀行名義であり、受託会社に資産を委託して運用の指図を行うという信託の仕組みから「委託会社」と呼ばれます。

外資系の場合は特にそうですが、国内系でも実際の運用機能はさらに海外の提携先(外部委託先等)が担い、日本の委託会社は対象資産の売買を行わないケースもままあります。

また、商品説明や勧誘資料である目論見書や販売用資料、運用の結果である運用報告書、月次レポート等も委託会社が作成しています。

委託会社のビジネスモデルは、1つの運用を長い期間、残高を多く続けるのが一番儲かります。なぜなら、できるだけ同じ運用戦略を使って大きな金額に適用すると、ファンドマネージャーやリサーチ担当者、アナリスト等のリソースが効率的に活用できるからです。

ゆえに、マザーファンド/ベビーファンドと言われるファンド構造や、海外親会社のファンドをくるむファンドオブファンド構造を使って運用プラットフォームの効率活用を図ります。

言ってみれば自動車の車台の共通化のようなものですね。逆に多品種少量生産は最も経営効率が悪いので委託会社は志向しないものです。個人投資家のニーズ各々に応えられればいいのですが、千差万別なので最大公約数の商品を作り、大量販売してくれる販社に委ねるか、販社の数を増やすことに注力します。

委託会社の報酬は、信託報酬という日々ファンドの残高に比例してかかる報酬のうち、委託会社に配分されるものが収入となります。コストは運用およびリサーチ担当者、基準価額計算事務担当者、レポート作成者、販社宛て営業担当者等の人件費に加え、マーケットデータや各種資料の印刷費等がかかってきます。

理想的には、1本の巨大ファンドがあれば事務やレポート作成のコストは固定費なので損益分岐点が下がり、収益力が高く左うちわということになります。しかし、当然ながら一本足打法のリスクと裏返しです。

プレーヤー2:販売会社

販売会社は投資家との接点で、口座管理、商品選定の助言、商品説明、分配金支払い、運用報告書の郵送等を担います。先に述べた信託報酬のうち、販売会社の取り分を「代行」報酬と言うこともあり、業界内では販売会社を「代行」と呼ぶこともあります。これは委託会社の作成した運用報告書の交付等を、販社が委託の代行として行うという意味です。

また、投信の約款等には「登録金融機関」という用語でも出てきますが、これも販売会社を指します。

販売会社の業態には大きく分けて証券会社、銀行、オンライン専業(銀行、証券)、直販があります。銀行や証券は顧客の資産を預かり、運用商品が色々ある中で投信を選び、その中で1本または数本のファンド購入を勧めることになります。

以下に、若干筆者のステレオタイプな見方も含めて各々の典型的な特徴を記します。

証券会社:投信の窓販の歴史が最も古く、品揃えが多いのが特徴です。相場観を語るセールスが得意なため、株式系やリスクの高い新興国資産等の販売に強いですが、その分テーマが終わると資金を別のテーマのファンドに振り向ける営業を行う傾向にあります。そのため、委託会社としては残高が急減することもあり得ます。

売り時も示唆してくれるので投資家にとっても参考になりますが、販社は販売手数料が主な収益源であるため、投資家も単にそうしたアドバイスに流されずに、コストをかけてでも乗り換えるべきか自問してみることを忘れない付き合い方が必要でしょう。

銀行:円の低利の期間があまりにも長引いているため、運用商品に振り向けたい顧客の預金を原資とし、外債の毎月分配型ファンドやバランスファンド等、元本リスクが相対的に低いファンドの販売が得意な傾向にあります。

外貨預金等も扱っているため為替情報には慣れている反面、株式系や売り時のアドバイス等は不得手な販売員が多いかもしれません。

オンライン銀行、ネット証券:この2つの間の差異は多くありませんが、特徴としては品揃えが圧倒的に豊富であることです。店舗を持たず、目論見書等の店頭在庫負担がないので、商品を増やすことに制約が少ないためと思われます。

販売手数料は説明負担がない分、店頭で販売する販売会社より低めに設定される傾向になっています。自分で相場観を持ち、資産や運用戦略の選択ができる投資家には特に向いています。販売員より知識がある、あるいは売買するものを決めている方からすると、店頭で販売員と相談する時間は煩わしいだけでしょう。

直販:一部の委託会社は販売会社経由の他に直販免許を持っていますが、主に機関投資家向けで個人投資家が利用することは稀です。決済機能や源泉税徴収機能等を一般の販売会社ほどフル装備していないからというのが理由です。

プレーヤー3:受託会社

有価証券の管理、基準価額の算出を行います。日本では信託銀行が受託会社となります。投資信託は顧客資産の運用であるため、委託会社から分別して信託銀行が保管、管理を行い、かつファンド毎に分別管理されて安全性を確保します。

さらに、委託会社が基準価額を出すと、資産の額に比例して受け取る報酬が高くなるよう時価評価等でエンピツをなめるという良からぬ動機も招きかねないので、受託会社が別途基準価額を算出して牽制機能を果たします。

まとめ

いかがでしたか。冒頭に述べたように、運用だけ任せたいのに色々なプレーヤーが絡んでその分複雑になり、かつ直接資産を取引するよりコストがかかる印象があると思われますが、各々が別の機能を担い、全体の仕組みとして公正性を確保するようにできています。

委託会社が相場のテーマという流行も勘案して運用商品というコンテンツを作り、販売会社はセレクトショップのように選別のうえ他の運用商品とも比較して顧客に提供し、受託会社は最終顧客の目に触れない「縁の下の力持ち」的な物流になぞらえたことが理解していただけると思います。

林 俊宏

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