[FT]仏大統領選、先頭に立つフィヨン氏(社説) – 日本経済新聞

Financial Times

 フランス大統領選の構図が見え始めてきた。27日に行われた中道・右派陣営の予備選で共和党の右派、フィヨン元首相が圧勝。対抗する社会党に有力なライバルがいないため、フィヨン氏は大統領の座に最も近い位置にも付いた。

 それでも、本選の決選投票で極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首を相手に有権者をまとめ上げなければならない見通しで、戦いは厳しさを増す。

 フィヨン氏は、ポピュリスト(大衆迎合主義者)の脅威に誰よりも対抗できる人物というイメージを打ち出している。同性婚などの社会問題に関するフィヨン氏の見解は、このところ発言力を増す伝統的なカトリックの保守派に安心感を与えている。移民とイスラム過激派に対する強硬な姿勢は、特にルペン氏の地盤である南部の諸都市でフィヨン氏がルペン氏の手ごわい敵になることを意味する。さらに右派の有権者は、沈滞するフランス経済を抜本的な自由市場改革で揺り起こすというフィヨン氏の政策構想を支持する姿勢を強めている。

 しかしながら、労働者階級の有権者の間で人気を高めているルペン氏に対し、これだけで太刀打ちできると考えるのは甘い。社会党政権は生活を良くしてくれないという思いが広がるなか、ルペン氏はブルーカラーの労働者を守ると約束してFNの訴求力の拡大に成功している。

 このような戦術が社会党と戦った地方選でルペン氏に大きな成果をもたらしたのだとすれば、ルペン氏が大統領選の決選投票でフィヨン氏に対して同じ戦術を用いることは、さらにたやすい。フィヨン氏の勝算は、極右に勝たせないために不本意ながら投票する左派の有権者の票をどこまで集められるかにかかってくるだろう。

 といっても、フィヨン氏の経済政策に見るべきものがないというのではない。雇用コストの削減、労使関係の再編、いわゆる常用雇用契約の見直しという提案は、あまりにも柔軟性の低い労働市場から締め出されている人々の助けになりうる。65歳への退職年齢引き上げと週35時間労働制の公式な撤廃も、欧州の中でフランスを異端にするものではない。フランスの歴代大統領は、肥大化した公的部門の改革という困難な決断から後ずさりすることがあまりにも多かった。

 しかしながら、今この時期にサッチャー革命のフランス版を提案するのは難しい。世界的に有権者は、市場の力から人々を守る政府の役割の拡大を求める意思を示している。ミッテラン政権で大統領特別補佐官を務めた経済学者のジャック・アタリ氏は、フィヨン氏の政策を「保護を減らし、もっと多く、もっと長く働け」ということだとする一方、ルペン氏は「外国人、解雇、テロリスト、政治家など、あらゆるものから保護することを約束している」と皮肉っている。

■フランスの右傾化示唆

 大統領候補の座を確保したフィヨン氏は中道寄りに動くかもしれない。だが、その余地は限られている。すでに詳細な政策案をまとめて公約しているからだ。しかし、これは意図的な行動だ。これまでフランスでは、大統領が抗議に直面し、公約した改革のごく一部分すら実行できないありさまが続いてきた。フィヨン氏は首相時代の苦い経験をふまえ、大統領に選ばれた際に委任されることになる行動の権限を可能な限り明確にしておこうとしているのだ。

 フィヨン氏が予備選で中道のジュペ元首相に勝ったことは、フランスの右傾化を示唆している。中道左派が真空状態にあるため、その影響はなおさら大きくなる。中道左派のオランド大統領に力は残っていない。最も有力な対抗馬はバルス首相だが、オランド政権の現職であることが汚点になっている。中道で経済的には自由主義のマクロン前経済相は、前向きなメッセージを発信しているが支持層の拡大に苦しむ。左派の混乱が逆説的にルペン氏に最大の好機をもたらしている。フィヨン氏とフランスの有権者は警戒すべきだ。

(2016年11月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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