不動産売買手数料が一律「3%+6万円」は、 なぜ世界からみて非常識なのか? – ダイヤモンド・オンライン



不動産売買の手数料は、日本が「3%+6万円」が上限であるのに対し、シンガポールでは「1%」と非常に低くなっています。シンガポールほど手数料が低いと、売り主と買い主の両方から手数料を取らなければ経営できないように感じますが、実際は1%でもきちんと経営しています。その秘密を探っていくと、日本の手数料が「3%+6万円」に張り付いていることの”非常識さ”が明らかになります。第2回は「不動産売買の手数料」を取りあげます。

 日本の不動産売買の仲介手数料は、取引額に応じて3段階に分かれています。

 下表のように、手数料の上限は「3%+6万円」(消費税別、取引額400万円以上)です。住宅であれば格安物件でも取引額は400万円を超えるため、この計算式だけ覚えておけばいいでしょう。なお、取引額が200万円以下では上限が取引額の「5%」、200万円から400万円は上限が取引額の「4%+2万円」となります。

 日本の不動産売買の仲介手数料(消費税別)
取引額 上限
 200万円以下 5%
 200万円~400万円 4%+2万円
 400万円以上 3%+6万円

 ただし、これは片手取引の場合の手数料。売り主と買い主の両方から手数料をもらう「両手取引」になれば2倍の「6%+12万円」となります。3000万円の中古マンションを仲介した場合、片手なら96万円、両手なら192万円の手数料が得られる計算です。もし、1億円の高級物件なら、片手で306万円、両手なら612万円にもなるのです。

 シンガポールはどうか。不動産売買の仲介手数料は取引額の1%と定められています。しかも仲介手数料は売り主しか支払わないため、単純計算では、売り主と買い主のエージェントで0.5%ずつに分けることになります。単純に比較すれば、不動産仲介会社が得られる手数料は、日本の両手取引の12分の1以下。これで、シンガポールの不動産仲介事会社は経営しているのです。

 不動産売買にかかる費用は、こんなに違う!
  日本 シンガポール
 仲介手数料 ・3%+6万円(片手取引)
・6%+12万円(両手取引)
1%
 その他費用 なし 必要に応じ、専門家へ支払い

 シンガポールでは、日本の分譲マンションに相当する「コンドミニアム」の価格が中古物件でも1億円を下回ることがほとんどありません。新築なら3億~4億円の物件も数多くあります。それだけ高額なので手数料率が低くてもやっていけるという見方もあるがどうでしょうか。

 1億円の物件を扱えば、手数料は100万円。それを売り主と買い主のエージェントで半分に分けると50万円は得られる計算です。「やはり50万円程度では、商売にならない」と日本の不動産仲介業者は考えることでしょう。ただし、日本とシンガポールでは不動産仲介会社の業務内容がかなり違っているため、1%でも成り立っているのです。

日本の売買仲介は、業務内容が盛りだくさん

 まずは、不動産売買における、日本の不動産仲介会社の業務内容を見ていきましょう。実は、かなり多岐に渡ります。

 売り主側の宅地建物取引士が重要事項説明書を作成して、買い主に説明することが義務付けられています。重要事項説明書では、「対象となる宅地または建物に直接関係する事項」が11項目(不動産登記の記録、都市計画法や建築基準法に基づく制限など)、「取引条件に関する事項」が8項目(売買代金、契約解除、違約金など)、「その他の事項」1項目が記載されます。

 さらに分譲マンションの場合は、建物の維持修繕の実施状況など10項目の情報も記載する必要があります。2018年4月に改正宅建業法が施行されると、中古住宅の場合は「建物状況調査(インスペクション)実施の有無」などの項目も新たに追加されます。

 これだけの情報を責任を持って調査したうえで、物件情報をインターネットや情報雑誌で広告・宣伝し、問い合わせや物件見学などに対応し、売り主への報告も行わなければなりません。

 かなり骨の折れる作業であるため、「地方の空き家」など低価格物件の売買仲介では、業務内容に対して仲介手数料が安すぎるため、不動産仲介会社が物件を取り扱わないという問題が生じています。例えば、売却価格が500万円の不動産なら、手数料はわずか21万円です。21万円で上記の業務をすべて行うのは難しいでしょう。

 一方で、マンションなどスペックが均一である不動産の場合は、土地や一戸建てに比べて、業務量が非常に少ないことは容易に想像できるでしょう。それなのに、手数料は一律「3%+6万円」で上限に張り付いています。

シンガポールでは、売買に関する業務を分業化

 一方、シンガポールでは、日本の重要事項説明書に相当する事項はエージェントの業務ではありません。売買契約及び重要事項説明に関しては弁護士が売り主と買い主の双方から話を聞いて作成します。建物の状況が心配であれば、仲介手数料を払う必要がない買い主がインスペクター(建物検査技術者)を雇って調査します。ちなみに、賃貸借では重要事項説明のようなものはありません。

 エージェント、弁護士、インスペクター、アプレイザー(不動産鑑定士)など専門家の役割がきちんと分かれていて、売り主、買い主は必要に応じて専門家に仕事を依頼して手数料を支払う仕組みとなっています。それらの手数料を加えると、仲介手数料の1%だけでは済みませんが、費用と業務内容の透明性は確保されていると言えるでしょう。これなら納得して手数料、その他諸費用を支払えますよね。

 こうした商習慣の違いから、シンガポールでは、エージェントの役割は不動産物件に関する「知識」よりも、売り主や買い主に対する「共感」だと言われています。いかに契約者に寄り添って不動産取引をサポートするかが重要なのです。そのため、シンガポールでは女性のエージェントが非常に多く、7割ぐらいを占めているだろうと思います。

日本のような一律の手数料は、実態と乖離

 不動産取引では、売り主と買い主では不動産仲介会社に求めるサービス内容は異なります。それなのに日本では、売り主と買い主にどちらも一律、「3%+6万円」という同額の手数料を請求しています。その根拠はどこにあるのでしょうか。

 また、売却する不動産の種類によって、業務内容は簡単だったり、複雑だったりします。ところが日本では、不動産仲介会社が一律で3%+6万円もの手数料をとります。両手取引であればその倍です。手数料を多少割引する不動産仲介会社も出てきましたが、まだそれは一部です。こうした実態に即していない商慣行は”非常識”ではないでしょうか。少なくとも、あまり納得できる手数料ではないですね。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

【関連記事はこちら】



>> 不動産の「両手取引」禁止は世界の常識!「囲い込み」の概念すらないシンガポール

こんな記事も読まれています



コメントを残す