熊本地震 災害廃棄物なお増え 「半壊」拡大、余震不安で解体需要 – 毎日新聞




処理率4割

 熊本地震から間もなく1年を迎えるが、解体家屋などの災害廃棄物の全体像がいまだ見通せない。熊本県は昨年6月に災害廃棄物量を約195万トンと推計したが、その約1・6倍にあたる316万トンと見込む環境省のデータもある。当初の推計より膨らむ廃棄物量に現地では処理が追い付かず、解体が遅れるなど被災者の生活にも影響が出ている。【林由紀子、川上珠実】

 「解体の時期がいつになるか分からない。被災した人が多いので仕方ないけれど自宅が気がかりです」。熊本市南区の仮設住宅で妹と暮らす男性(62)がため息をついた。市内にある木造平屋の自宅は屋根に穴が開いて傾き、昨年10月、市に解体を申請したが手つかずのままだ。同じ仮設住宅の女性(73)も半壊した自宅の解体を市に依頼したが、8月以降になると言われた。「建て直す予定なので、なるべく早く解体してほしい」と訴える。

 熊本市の災害廃棄物は県内最多だが、さらに増える可能性がある。市は昨年6月に81万2000トンと見込んだ推計量を12月、約1・5倍の126万トンに修正した。県が3月14日に発表した1月末時点の熊本市の処理量は55万5000トン、昨年6月の推計に対する処理率は68・4%だが、修正後の数字で計算すると44%にとどまる。

 市震災廃棄物対策課の荒木新吾主査は昨年6月時点では建物の被害認定調査が進んでいなかったことや、その後の2次判定で公費解体の対象となる「半壊」以上の認定が増えたことなどを理由に挙げた上で「余震が続いたことで最近になって『やっぱり壊そう』という人も出てきた」と説明する。

 昨年9月、マンションの解体や敷地売却を容易にする「被災マンション法」の熊本地震への適用が決まったことも影響しそうだ。市は3月いっぱいで民家や事業所建物の解体申請の受け付けを終えたが、分譲マンションについては今秋まで受け付けることにしており、荒木主査は「マンション分も一定数見込んではいるが、推計量はまだ増える可能性がある」と話す。

 廃棄物の量が当初推計をオーバーした自治体は他にも多く、阿蘇市や八代市など7市町は数字上の処理率が100%を超えても、実際には処理が終わっていない状態だ。環境省が昨年12月、県内の市町村が補助金申請のために提出した資料を基にはじいた県全体の廃棄物量は316万トンと県推計の約1・6倍に上る。こうした実態を踏まえ、県も近く推計を見直す予定だ。

 3月14日発表の1月末現在の処理量は、県全体で122万トンで処理率は62・8%だが、仮に廃棄物量が環境省まとめの316万トンと推計すれば38・7%しか処理できていないことになる。県は「2018年4月」の処理完了目標について「量が増えても変わらない」としている。

自治体間格差も

 災害廃棄物の処理状況は、熊本県内の自治体によっても進捗(しんちょく)に差が出てきている。

 益城(ましき)町や南阿蘇村など被害の大きかった7市町村は県が一部代行し早期復興を目指しているが、それ以外の市町村は原則として自治体ごとに業者と契約して処理している。県によると、高森町など4市町は昨年末までに処理が完了したが、9市町村は昨年6月の推計量で計算しても1月末の処理率が50%に達していない。

 処理率が19・5%と県内で最も低い氷川町の場合は、公費解体を予定している349棟のうち2月までに解体を終えたのは約3分の1の130棟にとどまる。町によると、県と委託処理について協議したが「震源地から遠く、被害も少ない」と認定され、町単独で処理することになった。

 担当職員は1人しかおらず、解体に必要な事務手続きから現場確認まで担う。町域が狭く公有地も少ないことから土地の確保にも時間がかかり、昨年12月にようやく仮置き場を設置した。昨秋時点では今年5月の処理完了を目指していたが「達成は困難」という。………………………………………………………………………………………………………

災害廃棄物が多い熊本県内10自治体の処理状況(1月現在)

      推計量  処理量   処理率

熊本市  81.2 55.5  68.4

益城町  42.2 13.6  32.3

西原村  10.9  6.0  55.9

御船町   9.6  4.5  47.9

宇城市   8.6  4.8  55.8

嘉島町   7.8  4.9  62.7

大津町   7.6  2.5  33.0

南阿蘇村  5.2  3.5  67.5

菊池市   4.8  4.9 101.6

宇土市   4.1  1.8  44.1

県全体   195  122  62.8

 (推計量、処理量は万トン、処理率は%。推計量は昨年6月時点の県まとめ、100トン以下切り捨て)




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