東芝再建、崖っぷち 半導体売却は高値必須 – 日本経済新聞



 経営再建中の東芝が崖っぷちに追い込まれた。米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の法的整理に伴い2017年3月期に1兆円超の連結最終赤字に陥る。国内製造業で過去最大の損失で、当初想定を上回る衝撃だ。海外原発の損失拡大リスクを完全遮断する狙いだが、稼ぎ頭の半導体メモリー事業の高値売却を迫られるなど代償も大きい。東芝の綱川智社長は「新生東芝」への意気込みを語るが、視界はなお晴れない。

ウエスチングハウスの破産法の適用申請について記者会見する東芝の綱川社長(29日午後、東京都港区)

 「海外原発事業から撤退することになり、東芝にとって一番大きなリスクがなくなる」

 東京都内の東芝本社で開いた記者会見。綱川社長はWHが米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した意義を強調した。

 WHの破産法申請が大きな意味を持つのは、WHが東芝の連結対象から外れるためだ。東芝は現在87%のWH株を持つが「今後は裁判所管理となるため、WHへの支配権がなくなる」(平田政善最高財務責任者)。2017年3月通期決算からWHは非連結となる。

 東芝がWHを買収したのは「原子力ルネサンス」のさなかの06年。WHはグループの海外原発事業をほぼ一手に担い、10年余りで合計112基を供給する世界最大の原発メーカー連合にのし上がる原動力となった。

 しかし東京電力福島第1原発事故で風向きは一気に変わった。「問題のある判断だった」。記者会見で綱川社長も指摘したように強気の戦略は裏目となり、WHが手がける米原発事業は止めどない損失拡大の元凶となってしまう。WH切り離しによりこの泥沼からは脱する道筋が開ける。

 「半導体メモリー事業の入札状況を見ているが、今後の債務超過解消が十分に見込める提案がそろった」

 WHが連結決算から外れるため、将来の原発工事のコスト負担がなくなる。外貨建て資産の評価損も減少し、合計で約3500億円の損益が改善する。一方で法的整理により原発建設が滞った場合のWHの債務保証約6500億円、WHへの貸付金を回収できない場合の引き当てで約1700億円の損失が発生する。

 株主から預かったお金である自己資本は3月末に1500億円のマイナスと想定していたが、さらに悪化し6200億円のマイナスとなる。

 損失穴埋めの切り札はメモリー事業の売却だ。債務超過額が6200億円に増えたため高値での売却が必須になった。税金を考慮すれば1兆円規模の売却益が必要だ。メモリー事業の純資産は5000億~6000億円程度とみられ、1兆円の売却益を得るには1兆5000億円程度で売却しなければならない。

 「海外原発以外の事業は順調に回復している。社会インフラを軸に再建を推し進める」

 東芝が新たな経営の核に据えるのが、昇降機や空調、水処理、鉄道システムといった社会インフラ事業だ。創業140年を超す「名門」の立場を生かし、国内官公庁向けを中心にインフラ事業は安定した収益を生んでいる。東芝はこうした事業に集中することで、20年3月期に連結売上高で4兆2千億円、連結営業利益2100億円という新生東芝の青写真を描く。

 だがインフラ事業は「特定の顧客との取引が多く成長性に課題がある」(証券アナリスト)との指摘もある。東芝の信用は失墜しており、新規受注の獲得も難しくなる恐れはある。



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