竹中工務店社長に聞く、五輪後の建設需要とまちづくり 宮下正裕(竹中工務店代表取締役執行役員社長)特別インタビュー – ASCII.jp



みやした・まさひろ/長野県出身。1971年東京大学工学部都市工学科卒業、竹中工務店入社。開発計画本部長、専務、副社長などを経て2013年より現職。日本建設業連合会副会長も務める。 Photo by Toshiaki Usami

建設需要の増加を追い風に最高益を更新した竹中工務店。一方で、残業規制や国内の建設需要の見通し、海外展開の成否など課題は多い。創業家以外では初めてのトップである宮下正裕社長に聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

──2016年度(同年12月期通期)決算は、連結純利益が前年度比39.3%増の614億円と過去最高を更新しました。好業績の要因を教えてください。

 ベースにはもちろん、建設業界の市場環境の良さがあります。また16年度は、資材費や労務費が安定的に推移しました。さらに当社はここ数年、事業環境を改善すべく、生産性向上やプロジェクトの良質化に取り組んできました。

 例えば当社は、設計施工比率(受注工事に占める設計と施工の両方を請け負う契約の比率)が60~70%台と高めです。設計施工ですと、お客さまのニーズをくみ取り、施工に生かしやすい特徴があります。最近は価格以外の要素を重視するお客さまも多く、有利に作用しました。

──一方で建設業界は、人手不足や残業規制の導入など課題が多く、さらなる生産性の向上が必要です。竹中としての、具体的な取り組みを教えてください。

 生産性の向上については、例えば、在来工法からPC工法(建物の部材を工場で製造するプレキャスト工法)への切り替えです。Jリーグ・ガンバ大阪の本拠地である大阪府の市立吹田サッカースタジアムは、PC工法を多用することで建設コストを抑え、総工費は約140億円となりました。

竹中工務店は子会社に竹中土木を持つが、事業の中心は建築工事。東大で都市工学を専攻した宮下社長はそこに、「まちづくり」という概念を取り入れようとしている Photo by Toshiaki Usami

 また、14年から社員にiPadを配布しています。iPadはBIM(設計図などをデジタル化し3次元情報で管理する仕組み)と連動しています。現場の技術者の、問題が起きた箇所の発見や対策がスムーズになりました。BIMは20年までに設計施工の工事で100%導入することを目指します。

──社員や、下請け会社の技能労働者の働き方改革についてはいかがですか。

 社員については、子育て中の女性が休みを取りやすいよう、一つの現場に2人のリーダーがいて交互に休めるようにしたり、複数の現場でリーダーがカバーし合う仕組みをつくったりしています。

 中小のゼネコンや下請けの技能労働者にとっては、残業の削減による賃金の減少をどう防ぐかという課題があり、業界全体で取り組む必要があります。

──20年の東京五輪後、国内の建設市場が縮小するといわれてきました。現時点での見通しはいかがですか。

 当初は五輪後に工事が大きく減るとの見方がありましたが、今では、そう大きく落ち込むことはないと考える人が多いと思います。20年以降に検討されている東京都心の巨大開発プロジェクトもあります。

 また、将来のインバウンド需要に対して、ホテルはまだ不足しています。さらに、地方中核都市のコンパクトシティー化に向けた再開発、老朽化した大型病院や行政庁舎の建て替えなど、今後もいろいろな需要が出てくると思います。

──とはいえ、国内は人口減少で中長期的には縮小するとなると、海外事業の拡大が必要です。どんな取り組みをしていますか。

 現在、海外受注高は全体の10~15%ですが、目安として、15~20%に上げていこうと考えています。エリアは今後も東南アジアが中心になるでしょう。海外では従来、日系企業の工場など生産施設の工事が多かったのですが、今後は超高層ビルやショッピングセンターの受注も拡大します。非日系企業からの受注も増やしたいですね。

 ただし、M&Aで海外事業を広げるという考えではありません。入社1年目の日本人社員を一部、研修時から海外に派遣しています。また現地採用のスタッフの教育のために、13年にタイに「タイ竹中技術訓練場」を設置し、運営や教育も現地採用のスタッフが行っています。現地採用でも、マネジメントができる人材を養成するのが当面の目標です。

──ところで、宮下社長の専門分野はまちづくりや再開発です。竹中の事業に自らの考えをどのように反映させていますか。

 14年にスタートした25年までの「グループ成長戦略」では、事業領域のステージを建物単体ではなく、「まちづくり」に広げていくことを掲げています。日本のまちづくりは、必ずしもうまくいっていません。日本の田舎は外国人観光客、特に欧米の人々に人気がありますが、都会は、浅草など特徴ある街以外はさほどでもありません。まちづくりを通じて、自然環境、エネルギー負担の低減、自動運転への対応など、社会課題を解決して価値を生み出すことを、事業の中心に位置付けました。

 今後は都心の大型再開発にも参画したいですし、財政に余力がなく再開発のノウハウが少ない自治体にも、さまざまな提案をしていきたいですね。

──現在、ゼネコン各社は工事採算の向上を実現しています。将来、受注環境が厳しくなったときにも、適正な利益を守っていくことができるでしょうか。

 公共事業でいうと、国土交通省が設計労務単価(公共事業の発注時の人件費の積算基準)を引き上げてくれました。業界としても、過去二十数年の落ち込みで技能労働者の処遇が落ち込んでしまいましたので、改善に取り組むためにも適正利益を維持する受注姿勢は守っていかなければいけません。

 デベロッパーさんから見れば、そんな生易しい話ではないのでしょうが(笑)、国交省を通じて、民間工事の発注時にもこうした点をご理解いただけるようお願いしています。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら


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