「先進のポルシェ」率いる 波瀾万丈の元地銀マン – 日本経済新聞



ル・マン参戦のレースカーを披露するポルシェジャパンの七五三木敏幸社長

 世界一過酷な自動車レースと呼ばれるル・マン24時間レース。6月17~18日に開催されるが、ポルシェは先進技術を満載したハイブリッドカーで3年連続の優勝を目指す。ポルシェジャパンは13日、都内でル・マンの関連イベントを開催した。元銀行マンで、輸入車販売会社の再生も手がけた、ポルシェジャパンの七五三木敏幸社長に日本戦略などについて聞いた。

■世界初のEV ポルシェ博士が開発

 「フェルディナント・ポルシェ博士は世界で初めて電気自動車(EV)、そしてハイブリッドカーをつくったんです」。13日、東京ミッドタウン(東京・港)。ル・マンに参戦するポルシェのレースカーをメディアに公開しながら、七五三木社長はこう強調する。ドイツが生んだ「20世紀最高の自動車設計者」といわれるポルシェ博士は、ガソリン車全盛時代を迎える前にEVを開発して1900年のパリ万国博覧会に出展したという。

 この発想が現在のEVやハイブリッドカーに使われるインホイールモーターの先駆けとなっている。七五三木社長は「環境に優しいクルマをアピールしたいという以上に、我々の先進技術や革新性を日本の顧客に理解してほしいから」という。ポルシェといえば、スポーツカーの会社というイメージが強いが、トヨタ自動車と世界の2強を争うフォルクスワーゲン(VW)グループの中核企業でもある。ル・マンに挑むのも、PRだけでなく、この先進技術を磨き上げるためだ。

 ポルシェの販売は世界的に伸びている。2017年1~3月の新車販売台数は前年比約7%増の約6万台。「911」に代表される従来型のツーシータースポーツカーに加え、SUV「カイエン」、小型SUV「マカン」、そして4ドアセダンの「パナメーラ」と車種を広げている。

■家族で楽しめるポルシェ

 セダンのポルシェは衝撃的だったが、「家族で楽しめるスポーツカーとして日本でも販売を伸ばしている。SUVとか、セダンと言っても後部座席でスポーツカーの醍醐味を味わえる。加速するとグッとくる、すごいとお客さんに驚かれました」(七五三木社長)という。ポルシェの国内販売はリーマン・ショック以降、7年連続で前年実績を上回った。16年販売は10年比の約2倍にあたる6千800台強に増えた。17年1~4月も前年同期比で2桁の伸びを記録するという。

 3月の欧州のジュネーブモーターショーで、新たに「パナメーラ スポーツツーリスモ」とハイブリッド車「パナメーラ ターボS E-ハイブリッド」「911 GT3」を披露。今後、順次日本市場に投入される。スポーツカーに、「ファミリー」と「先進技術」を融合して世界市場を席巻するポルシェ。日本の自動車業界でも注目の的だが、ポルシェジャパンを率いるトップは波瀾(はらん)万丈のキャリア人生を送ったカーガイだ。

■銀行マンから輸入車 破たんも経験

ポルシェジャパンの七五三木敏幸社長

 七五三木氏は群馬県出身。福田赳夫、中曽根康弘両元首相を輩出した名門、高崎高校から一橋大学を経て群馬銀行に入行した元エリート地銀マン。「睡眠は3時間」。仕事に追われ疲労困憊(こんぱい)するなか、好きなクルマを職業にしようと、メルセデス・ベンツ日本に転職した。その後、ダイムラークライスラー(現ダイムラー)のクライスラー部門に移ったが、09年には親会社の米クライスラーが破たんした。「地獄の半年」を味わいながら、日本のトップとして再建に着手した。

 クライスラーを傘下におさめた伊フィアット(当時)の最高経営責任者(CEO)のセルジオ・マルキオーネ氏に3時間に及ぶプレゼンを実行して再建計画を語り、旗艦車種「ジープ」の販売回復にこぎ着けた。「従業員のリストラも断行し、ジープの販売を年間9千台までに引き上げる仕掛けもつくった」という。

 そして七五三木氏は14年にポルシェに。苦難を乗り越えた元地銀マンは、いまポールポジションに立った。「2020年をメドにポルシェは革新的なEVを開発している。これまでのEVと全く違うクルマになる」と明かす。トヨタの牙城の日本市場で、ポルシェは、VWグループの先進企業として存在感をいっそう高めそうだ。

(代慶達也)

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