景気のもたつき長引く 円高や安値志向 9月短観 – 日本経済新聞

 円高やさえない消費を背景に、企業の景況感がいっこうに上向かない。日銀が3日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、円高の逆風を受ける自動車メーカーなど大企業製造業の収益計画が下振れした。訪日客の伸び悩みや、消費者の安い製品を好む傾向の強まりで小売業も苦戦が続く。もたつく景気の先行きは曇ったままだ。

 9月の短観は最も注目を集める大企業製造業の業況判断指数(DI、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた値)がプラス6で、前回6月と変わらなかった。3カ月後の予想である先行きもプラス6と横ばいが続く見通しだ。

 大企業製造業の景況感が改善しない大きな理由は、輸出企業の重荷になっている円高だ。

 今回の短観で2016年度の想定為替レートは1ドル=107円92銭と前回から3円超の円高となった。予想以上の円高が収益を圧迫するため、経常利益計画は前年度比14.6%減と前回に比べ3.3ポイント下振れした。

 足元の円相場は101円程度とさらに7円近く高い水準にある。企業収益は「一段の下方修正リスク」(大和総研の長内智氏)にさらされる。

 自動車の業況判断DIは今回、熊本地震の直後に生産がストップした反動で前回に比べて10ポイント改善のプラス8となった。しかし、円高の影響がはっきりと表れる先行きは、プラス3と今回より5ポイントの低下を見込む。

 自動車各社は円高への対応を急ぐ。

 トヨタ自動車は17年3月期に前期比で約18円円高の102円を想定する。為替変動が1兆円を超える営業減益要因となる。原価の低減や販売価格の引き上げを進めているものの「為替による収益の悪化をすぐにカバーするのは難しい」(幹部)。北米で販売が減速するなど不安材料もある。

 富士重工業は「16年10月~17年3月期の想定レートは、為替の動きや様々な経済情勢を見て判断したい」(高橋充最高財務責任者)という。

 他の輸出業も円高に苦しむ構図は同じだ。

 米アップルの「iPhone(アイフォーン)」向けに部品を供給するTDKは、1円の円高で年14億円の営業減益につながる。17年3月期の想定為替レートを110円と実勢より円安にしたままの電子部品メーカーは少なくない。

 個人消費の停滞が足かせとなり、小売りも景況感が盛り上がらない。足元は前回に比べ4ポイント悪化のプラス7となった。

 大手百貨店5社が3日に発表した9月の売上高(既存店ベース、速報値)は、5社中4社で前年同月に比べて減少した。衣料品が落ち込んだほか、化粧品などに売れ筋が移っている訪日客の消費が振るわなかった。台風も客足に響いた。

 阪急阪神百貨店は6.8%マイナスとなった。厳しい残暑に加え、雨の日が昨年に比べて多かったことから、コートやセーターといった秋物の動きが鈍かった。三越伊勢丹は4.4%減となり、高島屋は4.3%のマイナスだった。

 安いものほど売れる低価格志向の強まりも、消費が盛り上がりに欠ける原因だ。

 「他社が値下げするなら対抗値下げをする」。ニトリホールディングスの白井俊之社長は9月下旬の決算会見でこう強調した。品質を高めつつ値段を上げない「お値ごろ感」で顧客層を広げてきたニトリHDでさえ、9月の既存店売上高は1%減と10カ月ぶりに前年を下回った。

 手ごろな価格帯のカジュアル衣料品大手、しまむらの9月の既存店売上高は14%下回った。

 「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、2年連続の値上げを嫌気した消費者の客足を取り戻すため、今春夏商品から実質値下げを実施した。今秋冬商品も、春夏商品と同様に価格を見直すとの方針を示している。

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