現 建築関連法規の問題点とは? ~ 建築関連法規の全面見直しを① – HOME’S PRESS(ホームズプレス)



半世紀前の発想

建築基準法は1950年に制定された。

戦後、建ち並ぶバラックを、より衛生的な住宅にしていくことが大きな目的だった。産業発展を優先させるので、鉄やコンクリートは生産設備に優先的に回す。住宅不足だが財政に厳しいので、建て替えは個人に委ねる。だから住宅には、耐火性には目をつぶって安価な木造家屋で済ます。その幾分かは1950年に発足させた住宅金融公庫で融資するし、税制でも小規模宅地に優遇する。資材は、薪などの徴用ではげ山になったところに、スギを植林しておく(おかげで近年は花粉症が蔓延している)。

日本経済の復興にも悲観的で、とりあえずバラックを建替える、そんな貧しい時代の発想だった。鉄道路線の延伸に伴って、専業主婦世帯が郊外に土地付き一戸建てを所有する形が住宅すごろくの上がりとされ、木造密集地域が都心周辺から郊外へと広がった。

都市計画では、住居系、商業系、工業系、と分けるゾーニングが基本になった。そして1970年の建築基準法の改正で31mの絶対高さ規制を外してから、商業系や工業系の区域には総合設計制度など数々の緩和措置で容積率が上乗せされ、都市部の大地主に巨額の資産差益が生まれた。

こうして都心や駅前にタワーが建ち並ぶ都市風景に変貌していった。

制度の副作用

衛生的な住宅というのはもう当たり前、1973年には全ての都道府県で住宅数が世帯数を上回り、住宅不足でもなくなった。

区部の世帯構成では単身世帯49.1%、夫婦のみ16.1%、夫婦と子供21.5%(平成22年国勢調査)といったように世帯構成も多様化し、共働きも53.8%(東京都福祉保健基礎調査)と半数を超えて在宅勤務も4%に達して、暮らし方も様々になっている。従来の標準世帯はもはや意味を失い、一律の規制は意味を失ってきたのだが、細かく規制されたままだ。木造密集地域は解消されるどころか、木造のミニ開発が横行してさらに郊外へと拡大して火災危険度の高い地区に40万棟もの木造家屋が建て込むようになった。また戸建てが多いので、都市空間の利用効率も低い。

高層ビルは、人びとに圧迫感を与えて景観を乱し、近傍の空間需要を奪い、ビル風や輻射熱、温暖化ガス排出、さらにスラム化といった外部不経済を招く。その額80兆円超。

都内では5万人強の地権者が、宅地面積の3割を握るほどに不公平は著しい。

木造密集地域問題の外部不経済は、大規模な延焼の危険性と都市空間の過少利用である木造密集地域問題の外部不経済は、大規模な延焼の危険性と都市空間の過少利用である

経済制度設計の大原則

建築関連制度は、全面的に見直す時機だろう。経済制度設計の大原則なのだが、政府が市場に介入すべきなのは、

(1)大規模延焼やタワー公害などの外部不経済を抑え、外部経済を生かす

(2)少数地権者への土地資産の集中など、独占等で不公平が生じない

(3)公園や上下水道、道路網などの都市インフラなどの公共財を最適に供給する

といった三つの市場の欠点を補正すべきときのみで、後は競争的な市場に任せるのがよい。

さらに制度の要件は、

① 制度が簡潔で運用が直截的である。制度運営に、余計な業務や裁量余地が生まれない

② 各主体の選択に委ねても、外部不経済や独占に陥らない

③ 結果として、自ずから都市の魅力や空間効率が向上する

となり、この要件が適えられるように制度設計を工夫して構成する。

建築関連法規の見直し案

これからの建築関連法規の目的は、外部不経済を抑えることに置かれる。政策割当論にも通じるが、土地所有の独占問題には固定資産税の正常化、公共財の問題は地域経営の自律化(税源は固定資産税)、といったおのおのの制度が本質的な解決をもたらすと考えている。

建築関連の外部不経済としてはその損失額を試算しても、タワー公害と木造密集地域問題が重大な課題として捉えられる。

タワー公害の外部不経済は1棟当たりで試算して、圧迫感24億円、輻射熱7.1億円、ゲリラ豪雨6.1億円、遮風13.2億円、スラム化34億円、と小計84.4億円に及ぶ。これに近隣窮乏化による資産差益431億円を単純に合計すると総計515億円になる。さらに木造密集地域に隣接してタワーが建つと、ビル風にあおられて火災旋風が発生する危険性もある。これを都区部の超高層建物(20階建て以上)880棟分にあてはめると、総計約45兆円に相当する。このタワー公害による外部不経済は、東京五輪を名目にタワーが林立してさらに増大する恐れも高い。

⾸都直下型地震後にあちこちで出⽕すると、同時多発で⼤規模な延焼が広がって約40万棟が焼失し、被害想定でも都区部だけで50兆円ほどの経済損失に及ぶ。ミニ開発等で戸建て棟数密度が1ha当たり10棟増えると、都市空間の利用効率(容積充足率)は11.7%低下する。この経済損失を大雑把に試算する。区部宅地面積が36,396.9ha、住宅地の平均地価524千円/m2として190.7兆円の価値がある。いま区部全体の木造棟数密度は20.1棟/haだから、これによる都市空間の過少利用の経済損失は、44.8兆円と計算できる。

こうした数百兆円もの外部不経済を抑える制度としては、建築環境に関する一連の定量的な研究成果を踏まえて、制度群を一案として考えてみた。制度群の案は次回で説明したい。

建築関連の外部不経済としてはその損失額を試算しても、タワー公害と木造密集地域問題が重大な課題として捉えられる建築関連の外部不経済としてはその損失額を試算しても、タワー公害と木造密集地域問題が重大な課題として捉えられる

2017年 03月29日 11時07分



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