内部留保を貯め込んだ日本企業が「攻めの投資」をしない本当の理由 – 現代ビジネス

内部留保を貯め込んだ日本企業が「攻めの投資」をしない本当の理由
後ろ向きな組織文化の慣性力

経済成長に寄与する企業の「前向き投資」が設備投資というのは昔の話。今や、製造業では研究開発投資、非製造業ではICT投資の中核となるソフトウェア投資が収益力向上のためのカギだ。しかし、日本企業では今、そのソフトウェア投資が減速してきている。そこには過去のトラウマを払拭できない日本企業の悪弊が見え隠れしている。

もはや設備投資の時代ではないが

エコノミストの常識が、企業の非常識であることには気をつけたい。

1年くらい前、筆者は複数の企業の集まりで中堅社員たちに尋ねたことがある。

「なぜ、大企業を中心に設備投資をしなくなったのか?」

すると、逆になぜ設備投資にこだわるのかと質問を投げ返された。

「今時、自社の有形固定資産を増やすことで収益率(ROE)を高められるという発想は古い。M&Aや研究開発など、必ずしも固定費負担を増やさなくても、企業が収益率を高める方法はいくらでもある」

この発言者は、明示的ではなかったが、マクロ指標の設備投資が増えていなくても、企業はきちんと収益率を高める努力はしていますよ、と言いたかったのだろう。マクロ指標の設備投資額だけで評価してもらっては困るということだ。

設備投資という伝統的な指標だけで判断するエコノミストの常識が、企業にとって非常識になっていることに気付かされた。

製造業は研究開発、非製造業はソフトウェア

では、何を見て企業行動を判断すればよいのか。

たしかに企業の活動の中では、有形固定資産をダイレクトに増やさなくとも、ソフトウェア投資、研究開発、人材投資(研修などスキル形成を目的)、ほかにも無形資産を増やす活動は数多ある。広範囲に分岐した企業の投資を経済統計は必ずしも正確に把握できなくなっている。

そこで内閣府のGDP 統計は、2016年第4四半期から設備投資に研究開発費を含めることにした。それに連動して、日本銀行短期経済観測調査(日銀短観)でも、2017年3月調査から研究開発費を調べ始めた。

今年4月に発表されたこの日銀短観のデータは興味深い。2016年度計画における全企業の設備投資額は36.0兆円で、それに対して研究開発費は13.6兆円と大きなものになっている。

このうち、自動車、電気機械、化学(含む医薬品)の大企業の研究開発費は併せて8.9兆円。全体の2/3がこの3業種で占められる。第4次産業革命が騒がれるのを反映して、グローバルな開発競争に駆り立てられている企業の姿が、この数字にも表れている。

自動車など3業種の大企業は、いずれも国内設備投資の2倍以上の研究開発費を投じている。日本の技術輸出は、2015年度3.3兆円の輸出超である。自動車、電気機械の大手は、海外で生産して子会社からパテント料などで利益を受け取って稼いでいるのである。

研究開発費の大部分は、製造業によるもので、非製造業はわずかである。研究開発費全体の13.6兆円のうち、非製造業は1.2兆円と8.8%に過ぎない。

その理由のひとつは、研究開発費が自然科学に限られていて、非製造業の活動に馴染まないからだ。非製造業はむしろICT(情報通信技術)投資としてソフトウェア投資を行って、業務システムを高度化させる。そこでソフトウェア投資の約7割は非製造業が占めているのである。

非製造業のソフトウェア投資は、製造業で研究開発投資にあたる、未来に向けての投資なのである。

なぜ鈍化するソフトウェア投資

しかし、そのソフトウェア投資が頭打ちから減速の傾向を見せているのである。

ソフトウェア投資の伸び率は、2013年度に前年比13.5%と大きく伸びた後、2014年度2.0%、2015年度1.2%、計画ベースで2016年度2.2%、2017年度△3.1%と低迷している。設備投資に占める割合も若干ながら低下してきている。

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