焦点:2017年度の想定為替レート、ドル105円に修正なら減益予想も … – ダイヤモンド・オンライン



[東京 19日 ロイター] – 足元のドル安/円高の動きで、日本企業のドル/円<JPY=EBS>想定レートが円高方向に修正される公算が大きくなっている。従来、2017年度は110円とする企業が多かったが、現在の水準は3月日銀短観の想定レートに近い108円半ばに下落。保守的な見方をベースに105円を選択する企業が増えれば、今週から始まる決算発表で当初の通期予想が、減益となるケースも増えそうだ。

<経営者のバイアス>

「きょうは社内でもめていた」──。ドルが108円前半まで下落した17日、ある大手機械メーカー社内では、事業計画の前提となる想定為替レートについて激しい議論になった。同社は直近110円とみていたが「108円台が長引くようなら、105円にしなければならないとの意見が出た」(経営企画担当役員)という。

3月日銀短観(調査期間2月27日─3月31日)によると、17年度の大企業・製造業のドル/円想定レートは平均で108.43円。3月前半に米利上げ観測が強まりドルが115円半ばまで上昇していた当時は「余裕」のある設定だった。

しかし、足元でドル/円は「短観レート」の水準まで下落。テクニカル面では中期トレンドを示す200日移動平均線や、52週移動平均線を一時割り込んだ。政治や地政学上のリスクに加え、さえない米経済指標も多くなっており、米長期金利<US10YT=R>が、年初から維持されていた2.3%を大きく下回るなど、ファンダメンタルズ面でも分岐点にいる。

3月中は110円に想定レートを置きやすい状況だったが、このまま108円台が続けば、業績の下方修正要因になる。当初の業績発表段階では予想利益が小さくなったとしても、下方修正より上方修正を好む経営者は105円を選択する可能性が高そうだ。

ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏によると、TOPIX500を構成する3月決算企業、約400社の業績は過去15年間で11回、期末実績が期初予想を上回った。一本調子で業績が拡大してきたわけではなく、そこには「期初予想を抑えて、下方修正を避けようとする経営者のバイアスがある。想定為替レートは低い方が選ばれやすい」(井出氏)という。

<円高には耐性も>

1ドル100─110円は、日本の輸出企業にとってそれほど悪い水準ではない。

内閣府が2月に公表した「企業行動に関するアンケート調査」によると、今年1月半ば時点での上場企業(輸出を行っている企業のみ対象)の採算レートは100.5円。前年度に比べ2.7円の円高水準となった。円高に対する耐性はついてきている。

ある大手自動車メーカー幹部は「現地生産や部品の現調率も高めている。この期に及んで一喜一憂していない」と話す。「国際情勢の先行きは誰にもわからない。トランプ大統領の発言、行動も米国の政府関係者ですら『一寸先は闇』、予測不能だといっている」とし、為替予想に関しては、半ばあきらめモードだ。

別の都内の大手自動車部品メーカーは110円を想定。「ファンダメンタルズで想定を大きく変更すべき事象が見受けられない」として、現時点では変更する予定はないという。ただ、1月以降、ドル建てとユーロ建ての資産を大きく減らし、為替変動リスクに備えているという。

<減益予想の可能性も>

日本企業に円高耐性はついてきているとしても、前年比で減益予想となれば、市場に与える印象は悪い。

3月日銀短観によると、17年度の大企業・全産業の収益計画は、売上高が前年比1.4%増、純利益が0.7%増と微妙なラインだ。想定為替レートを110円から105円に見直す企業が増えれば、一転して減益予想になるかもしれない。

SMBC日興証券の株式調査部が行った試算によると、日銀短観の調査対象企業(大企業)は、1円円高になると全体で経常利益5284億円、経常利益率にして1.5%ポイントの押し下げ要因になるという。

同部部長でチーフエコノミストの牧野潤一氏は「円高が進めば企業収益を圧迫し、株価にも影響を与える可能性がある」と指摘する。

予想PER(株価収益率)などでみて他の海外株より割安というのが、日本株に強気な見方の一要因だった。しかし、当初の業績予想が市場の期待ほど伸びなければ、割安感は強まりにくい。

3月期企業の決算発表は20日の安川電機<6506.T>を皮切りに、今月末にかけて本格化する。そのときの株価水準次第ではあるが、市場予想を下回る業績予想を「上方修正の余地あり」とポジティブに受け止めるセンチメントが醸成されていなければ、「保守的予想」はいったん売り材料とされる可能性が大きい。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)



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