長期環境戦略に3つの論点 徹底した政策論争 期待 – 日本経済新聞



 11月6日から第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)がドイツ・ボンで始まった。今回はパリ協定の実施ルールなど2030年までの枠組みの議論が中心だが、20年に予定される50年への長期戦略についての情報交換も活発だ。日本でも50年への戦略の検討は本格化しそうだ。

 これまでの議論を振り返ると長期戦略の論点は3つだ。

 第1は炭素価格。排出すれば何らかの形でコストが発生することはほぼ共有された。しかし「既に日本の炭素価格は世界で最も高い水準であり、また削減目標の達成コストも高い」との分析がある。一方で「国内総生産(GDP)当たりの二酸化炭素(CO2)排出は決して少ないとは言えず、20年近く改善もしていない」との分析もある。

 また、温暖化ガス削減に向けた政策手段として炭素税や排出量取引、数値規制、あるいは企業の自主的な取り組みなど多様な選択肢があるが、「排出量取引は価格が変動するのでコストが確定できない」と反対があり、炭素税では「税収は削減のため効率的に使われているか」との懸念がある。

 また自主的な取り組みでは「本当に約束は守られるのか」との疑問が投げかけられ、規制はイノベーションを「阻害する」のか「促進する」かで対立している。国際比較と最適な政策で意見が分かれているのが現状だ。

 第2はエネルギーと産業構造。再生エネルギーの発電コストが下がり、利用増大が見込まれることは共通の見方だ。しかし再生エネの主力である太陽光発電は気象条件に左右され、エネルギー貯蔵など電力システムの負担が増す。30年には買い取り費用だけで3兆円を超すとも言われる。

 国民負担の軽減や公平な負担の仕組みは電力・ガス市場の自由化の検討に持ち越される。50年の経済や産業構造を、今ある技術をもとに描くか、まずは望ましい姿を描くか、ここが政策論議の根本にかかわる最大の論点かもしれない。

 第3は国際協力。気候変動枠組み条約やパリ協定が求めているのは世界全体の排出量の削減だ。グローバル化の進展もあり、海外で減らすことの重要さは共通認識となった。国内と海外での削減の使い分けと、海外での貢献を評価する仕組みが議論されるだろう。

 排出量取引や炭素税など政策を巡る議論は、成長産業への投資促進にあたって「政府資金に期待する」のか「政府は投資環境を整備、投資は市場に任せる」のかの政策選択に通じる。

 産業やエネルギー構造の転換は痛みも伴うから遅れがちだが、早期転換による市場での優位確立の機会を逃すのは産業政策共通の悩みだ。グローバル化により国境を越えて事業の最適化を図るのは企業にとって当たり前であり、排出コストも例外ではない。

 気候変動問題は膨大な財政赤字とその裏返しの豊富な民間資金の下で成長戦略を模索する日本経済の課題そのものだ。どのような世界を前提にどのような日本を目指すのか、グランドデザインはしっかりつくらなければならない。意見の差は大きく見えるが、ぶつけあうことで収れんしていくのが常だ。徹底した政策論争を期待したい。

 専門家が週替わりで国内外の最新動向を読み解きます。

[日経産業新聞2017年11月10日付]



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