活を入れられたので人工知能診断で世界を目指します – BIGLOBEニュース


「なんで君たちは世界を目指すという発想がなく、国内だけで仕事を考えているんだ!」

「まずは国内からと思いまして・・・」

「本当に良いサービスならば国内から海外に広がっていくはずだ。そういう視点を持って考えていかないといけないんだよ!」

 NHKの取材クルーが撮影している中、メンターたち(起業家、ベンチャーキャピタリストなど)からのアドバイスが飛び交います。

 5月21〜22日、私は「BRAVEアクセラレーションプログラム」(研究の実用化をサポートしてくれる研修。主催はベンチャーキャピタルのBeyond Next Ventures)に参加していました。私は胃病変の内視鏡検査にAIを組み合わせて、早期診断と病変見落とし防止の研究を進めています、その実用化に役立つ有益な情報とサポートを得るために研修に参加したのです。

 上のやり取りは、その研修での一コマです。

 私はこの研修で「世界を目指す」という発想を久しく忘れていた自分に気づき、打ちのめされました。そして、日本の大学や企業、教育現場で「世界を目指す」いう目標を掲げて活動しているところがどれくらいあるのだろうかと、考えこんでしまったのです。

新たなチャレンジが少なくなった日本

 世界の中で日本の存在感は低下の一途をたどっています。例えば、日本の名目GDPはドルベースで見た場合、ここ20年でほとんど増えていません。また、日本国内では最高位の東京大学でも世界大学ランキングでは34位、アジアの中でもようやく5位というポジションです。日本の最大の企業であるトヨタ自動車も、世界の会社の時価総額ランキングでは44位の会社です(もっと言うなら、世界のトップ50社の中に日本の企業はトヨタ1社しか入っていません)。

 この理由としては「日本の産業の新陳代謝が上手く回っていないから」「新しく事業を起こすアントレプレナーが少ないから」「既存の企業が新たな事業に挑戦せず、新たな経済成長を牽引する次世代主要企業が生まれていないから」といった要因が挙げられています。

日本のベンチャーが育たない理由

 次世代企業を育てなければならないことは政府も十分に認識しており、さまざまな政策を実行しています。NEDOのホームページだけでも数十に及ぶコンテストが紹介されています。

 しかし新規事業振興と言いつつも、資金調達に関しては担保や保証人が必要だったり、返済の必要のない研究補助金は単年度のものが多く、社会に役立つ商品研究開発をするというよりは資金獲得が最大の目的となってしまうケースも多々みられます。

 私が今回の「BRAVEアクセラレーションプログラム」に参加して一番驚いたのは、研究内容を事業化して500億円規模の企業に(海外売上分もふくめて)成長させられる見込みがあれば、3〜5年間は赤字でも資金調達が可能であるという点でした。

 半年〜1年間で借金返済を始めなければならないという制約から解き放たれて、3〜5年後に大きく企業を育てるという発想を持てば、いろいろなことが可能になってくるのではないでしょうか?

切実な必要性が世界を変える

 世の中では様々な現場にいろいろな困りごとがあります。

 私の場合は、「消化器内視鏡検査(検診)の年間数十万枚に及ぶ多量の画像のダブルチェック業務を、なんとか精度を保ちつつ簡便化したい」という気持ちから、内視鏡画像人工知能診断プロジェクトを手がけることになりました。

 胃病変の人工知能診断においては、人間の内視鏡専門医並みの精度を人工知能が出せることが確認できたため(前回の記事も参照ください)、現在、大手病院とも連携して多数症例での検討と他疾患への展開も期待しています。これは「現場のがんの見落としをゼロにしたい」という切実な必要性から生まれた研究開発です。

「消化器内視鏡画像の人工知能診断」という非常にニッチな分野ではありますが、このようなものでも、全世界で人の役に立つサービスとなる可能性が広がっています。

「この仕事は世界で通用するのか?」

 全世界を席巻したピコ太郎さんの「PPAP」、そして、世界中の人から賞賛された「奇跡の7分間」と呼ばれる新幹線清掃チームなどの例もあります。

 私のクリニックは埼玉にありますが、内視鏡画像人工知能診断プロジェクトチームの人工知能開発は山形のIT企業と共同で行っています。「埼玉+山形」の組み合わせで世界を目指す研究商品開発ができるというのは、まさに、世界がネットでつながった現代に生きている恩恵なのではないかと感じます。「この仕事は世界で通用するのか?」「世界で通用するにはどうしたら良いのか?」を日本全国で多くの人が考え、共同することで、様々なイノベーションが生まれることでしょう。

 私が受けた刺激を、このコラムをお読みのみなさんと少しでもシェアすることができたならば、とても嬉しく思います。

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筆者:多田 智裕


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