スー・チー改革正念場 和平遠く、経済も減速 ミャンマー新政権1年 – 西日本新聞



 半世紀の国軍支配が続いたミャンマーで、アウン・サン・スー・チー国家顧問(71)が事実上のトップを務める新政権が誕生して30日で1年。国民の期待とは裏腹に、少数民族との和平に進展はなく、課題は山積。経済が停滞すれば幻滅に変わる恐れもある。スー・チー氏は政治家として正念場を迎えている。 (バンコク浜田耕治)

 「われわれには主権を守る責任がある」。首都ネピドーで27日に開かれた国軍記念日の式典で、国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官は強調した。

 西部ラカイン州で昨年10月に起きた武装集団による警察施設襲撃事件を契機に、国軍などは掃討作戦を実施。イスラム教徒の少数民族ロヒンギャに対する強姦(ごうかん)、虐殺などの人権侵害が表面化したが、作戦の正当性をあらためて主張した。

 この問題では、スー・チー氏の国軍寄りの姿勢が目立ち、国際社会の批判を浴びている。国防、内務、国境の3大臣は国軍が押さえているため、指導力を十分発揮できないジレンマはあるが、政権安定のため国軍との関係を悪化させたくないとの思惑ものぞく。

 人口の7割を占めるビルマ族と少数民族武装勢力との和平も課題だ。スー・チー氏は「21世紀のパンロン会議」などを開き和平実現を目指したが、今年2月の対話は延期に。北東部シャン州では戦闘が激化し、少数民族のスー・チー氏への期待はしぼみつつある。

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 唯一、成果と言えるのはスー・チー氏自身が外相として取り組む外交だ。中国を訪れ、前政権による中国企業のダム建設凍結で冷え込んでいた関係を改善。日本訪問では8千億円規模の経済援助を引き出した。

 昨年10月には、米政府に経済制裁を全面解除させた。米国は1990年代後半から、当時の軍事政権が民主化運動を弾圧したとして制裁を強化。100以上のミャンマー企業・個人を対象リストに掲載し、米企業との取引を禁じてきた。

 米制裁はミャンマー経済の足かせだっただけに「ビジネスの自由度は格段に高まり、ミャンマーに対する外国人の見方も変わった」(大和総研主席研究員ヤンゴン駐在の佐藤清一郎氏)。しかし、足元ではインフレによる物価上昇で庶民の生活は苦しさを増す。

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 政権は昨年7月に経済政策を発表したが、インフラ整備など12分野の重点項目を列挙しただけで具体性を欠く内容だった。政権内に経済政策に明るい人材が少ないためだとされる。

 2016年の実質経済成長率は6・3%と前年の7・3%から減速。エネルギー不足など課題は山積する。政権は4月の水祭りの10連休を、経済停滞を理由に5日に短縮すると発表し、強い反発を招いた。市民には「経済がうまくいっていない焦り」とも映る。

 北九州市立大の伊野憲治教授(ミャンマー研究)は「スー・チー氏の人気は高く、不満の声はまだ少ないが、任期満了の4年後は分からない」と指摘。「生活が良くならず格差が広がり続ければ、愛想を尽かされる恐れもある」と話す。

=2017/03/30付 西日本新聞朝刊=

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