英首相「後戻りできない」 EU離脱を通知 – 日本経済新聞



 【ロンドン=小滝麻理子】英国のメイ首相は29日、欧州連合(EU)に離脱を通知した。離脱条件などを決める原則2年間の交渉が正式に始まる。英国は40年以上にわたる欧州統合の参加に終止符を打ち、2019年3月末にも離脱する。EU加盟国の離脱は初めて。欧州統合に打撃となり、交渉の行方は、世界の政治・経済にも大きな影響を与える。

29日、英議会でEU離脱交渉に向け結束を呼びかけるメイ首相=AP

 離脱通知はEU基本条約(リスボン条約)50条に基づく。メイ氏は通知後、英議会で「歴史的な瞬間だ。後戻りはできない。より公平でより強く、真にグローバルな英国をつくる」と訴えた。同時に「欧州を去るわけではない」として、離脱後もEUと緊密な関係を続ける意向を強調した。

 一方、EUのトゥスク大統領は英国との交渉に関し「EUの犠牲を最小化することが最優先だ」と述べた。4月29日に英国を除く27加盟国による首脳会議を開き、今後の交渉方針を採択する。本格的な交渉は5月半ば以降に始まる見込みだ。

 前例のない離脱交渉は前途多難だ。英国は2年の交渉期限内に離脱条件やEUとの新たな自由貿易協定(FTA)、事業環境の急変を避けるための移行措置などの合意をめざす。EUは英国を特別扱いせず、厳しい姿勢で臨む。英国がかつて拠出を約束した未払い金の支払いなどを巡り、早くも対立が鋭さを増す。

 揺れる英国内の情勢も影を落とす。北部スコットランドの議会は28日、EU離脱前に英国からの独立について住民投票の再実施をめざす方針を賛成多数で可決した。北アイルランドでもアイルランドへの併合をめざす民族政党が勢いづく。

 全加盟国が交渉延長に同意しなければ、英国は2年後にEUを離れる。金融市場では交渉が難航し、離脱条件や新たな貿易協定で合意できない「ノーディール」のまま英国が離脱することへの警戒が高まっている。

 第2次世界大戦後、統合へ動いてきた欧州にとって、英国の離脱は大きな痛手だ。英国の国内総生産(GDP)はEU全体の16%を占め、ドイツに次ぐ2番目の規模。国連安全保障理事会の常任理事国や北大西洋条約機構(NATO)加盟国として安全保障面でも存在感は大きい。相次ぐテロや難民対策などを巡り加盟国の結束が揺らぐなか、EU側は反EUの動きが広がることを恐れる。

 世界中からヒト・モノ・カネを集め、成長してきた英国にとっても大きな転機となる。離脱交渉が長引けば英経済の不透明感が強まり、英国への投資が鈍るといった悪影響が出る恐れがある。

 英国は1973年にEUの前身となる欧州共同体(EC)に加盟。域内無関税などを定めたEU単一市場に参加し、経済成長につなげた。だが東欧などから移民が急増。労働者層を中心に仕事が奪われているといった不満が蓄積した。キャメロン前首相は昨年6月、EU残留の是非を問う国民投票を実施。離脱支持52%、残留支持48%の僅差でEU離脱が決まった。



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