日本も「独立財政機関」を設置せよ – 日経ビジネスオンライン

 いま政府・与党が、統計改革を進めている。それは、統計法(平成19年法律第53号)第1条(目的)が定めている通り、公的統計が「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」であり、「国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与」するためである。すなわち、人類が獲得した重要な「知識」は公共財の性質をもち、公的統計も民間部門が合理的な意思決定を行うための一種の「公共財」の役割を担う。この視点に立って、筆者は、統計改革と同様、政府が公表するマクロ経済や財政に関する予測やその精度を高める仕組みも重要であると考える。

 というのは、東京オリンピックが開催される2020年度を分岐点として、それ以降、日本経済や日本財政の「景色」は急速に変わる可能性が高い。これは、経済学者を含む多くの有識者の共通認識だろう。2020~25年度にかけて、団塊の世代が75歳以上になり、医療・介護費が急増する一方、オリンピック景気が完全に終了する可能性が高い。

 このため、マクロ経済や財政の現実をしっかり直視し、財政再建を進めるために、2020年度以降の急速な状況変化を的確に予測しておく必要がある。そのためには、将来のマクロ経済や財政の姿を浮き彫りにする慎重かつ誠実で信頼性の高い予測が必要となる。

 その関係で、内閣府が年2回ほど公表する「中長期の経済財政に関する試算」(いわゆる「中長期試算」)は、いくつかの課題を抱えていると考えられる。

予測誤差を検証せよ!

 第1の課題は、新たな試算と前回の試算との間に生じる予測誤差に関する分析や事後検証の機能が弱いことである。このことを確認するため、内閣府が2017年1月25日の経済財政諮問会議において公表した最新版の「中長期試算」と、前回版(2016年7月26日)の試算を比較してみよう。

 中長期試算には、高成長(実質GDP成長率2%程度)を前提とする「経済再生ケース」と、慎重な成長率(実質GDP成長率1%程度)を前提とする「ベースラインケース」がある。このうち、「経済再生ケース」における基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の予測(対GDP)をプロットしたものが、以下の図表1である。

 黒線が前回版のPB予測、赤線が最新版を表し、〇印の折れ線は前回版と最新版のPB変化を示す。〇印の折れ線が示す通り、最近版のPB赤字(対GDP)は2016年度以降で拡大している。主な要因は、前回版と比較して、国や地方の税収等(対GDP)の予測経路が下方改定された影響が大きい(棒ブラフを参照)。

図表1:最新版および前回版のPB予測(経済再生ケース)

(出所)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2017年1月版・2016年7月版)から作成

 同様に、最新版および前回版の「ベースラインケース」におけるPB予測(対GDP)をプロットしたものが、以下の図表2である。ベースラインケースにおいても、PB赤字(対GDP)は2016年度以降で拡大している。こちらも経済再生ケースと同様、主な要因は国や地方の税収等(対GDP)の予測経路の下方改定である。

図表2:最新版および前回版のPB予測(ベースラインケース)

(出所)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2017年1月版・2016年7月版)から作成

 この税収等(対GDP)に関する下方改定は、妥当な対応と考えられる。というのは、財務省は2016年度の税収を当初57.6兆円と見積もっていたが、法人税を中心に約1.7兆円下振れし、赤字国債を約1.7兆円増発する事態に陥ったからだ。税収見積もりの下方修正は、リーマン・ショックの影響で景気が低迷した2009年度以来、7年振り。その理由の一つとして考えられるのは、「景気循環」である。

 これは「前回版において、景気循環を考慮しておらず、税収等(対GDP)の予測経路が甘かった可能性」を示唆する。

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