80万人の待機児童問題も解決!? 「子育て支援」1.4兆円が経済成長率を上げ、子供の貧困・自殺率を下げるワケは? – ダ・ヴィンチニュース




『子育て支援と経済成長』

 2016年の流行語にも選ばれた「保育園落ちた日本死ね」。衝撃的なタイトルで世間を騒がせた匿名の投稿から1年以上が経ったが、保育園の入園をめぐる親たちの苦悩は今も続いている。

 待機児童問題はどうしたら解決できるのか? 『子育て支援と経済成長(朝日新書)』(柴田悠/朝日新聞出版)は、この問題に統計分析という手法で挑み、政策に必要となる予算や財源の確保の方法などの具体的なプランを提案している。

 著者の分析によると、潜在的な待機児童の数はおよそ80万人。待機児童問題の解決には1.4兆円の追加予算が必要だと試算している。

子育て支援は財政の負担なのか?

 著者はまず、社会保障が財政の負担とみなされている「暗黙の前提」を疑っている。子育て支援が進んでいる諸外国のデータと日本のさまざまな統計データを比較分析することによって、子育て支援に1.4兆円の追加予算を投入すると経済成長率が0.64%上昇するという結果を導き出した。約3.2兆円の名目GDPが増加し、投入した予算の約2.3倍の経済効果が生まれるという。公共事業に予算を投入した場合は1.1倍、法人税の減税では0.6倍の効果しか得られないというデータから子育て支援は財政の負担どころか、経済効果が期待できることを明らかにした。

 また著者は広範囲にわたる政策効果を分析し、子育て支援の副次的な効果として労働生産性を向上、財政の改善、子どもの貧困や自殺率の低下にもつながることを見出している。

1.4兆円を投じて何をするか?

 経済成長の鍵となるのは、待機児童問題によって働きたくても働けない女性たちが、働けるようになることだ。そのための子育て支援は産休育休や給付金ではなく、保育サービスの拡充がもっとも効果的だとしている。追加予算の1.4兆円を使っておこなうのは、保育施設の確保や保育士の増員だ。不足している保育士の約9万人に対して、資格を持ちながら保育の仕事に就いていない人は約76万人。その理由は低賃金であることから、保育士の給与引き上げもこの中に含まれている。

1.4兆円はどこから捻出するか?

 財政赤字を抱える日本がどうやってこの追加予算の財源を確保するか。著者は複数の税を少しずつ引き上げるミックス財源を掲げ、アベノミクスの成長の果実や霞が関の埋蔵金、消費税の引き上げや相続税の拡大など財源となりうる材料を提案している。ミックス財源には予測不可能なリスクの分散や、一部の人だけが負担することで生じる不満を回避する狙いもあるという。

 本書では、待機児童問題の解決は経済効果以外にも、少子化や貧困、自殺などの深刻な社会問題の改善にも関わっていること分析し、データをもとに子育て支援が社会全体にもたらすプラスの効果を明らかにしている。日本の超高齢化問題は、社会保障が手薄な歴史的背景と、この数十年の間、子育て支援などの現役世代への支援に注力してこなかった結果だ。最後に著者は、今後、ますます厳しい状況に陥ることが予想される日本の未来を危惧し、この国に暮らす私たち自身が将来を考えてほしいと結んでいる。

文=鋼 みね



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