実質賃金上昇 「名目」の伸びも着実に – 北海道新聞

 国民にとって「賃金が上がった」との実感にはまだ遠いというのが現実ではないか。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、働く人が昨年1年間に受け取った賃金の購買力を表す「実質賃金」が前年比で0・7%増えた。プラスは5年ぶりだ。

 雇用環境が改善され、賃金は緩やかながらも上昇基調にあるのは確かだ。ただ今回、実質賃金を押し上げた最大の要因は、原油安や円高による物価下落である。

 その物価も現在、原油価格の変動に伴って上がる傾向にある。

 肝心なのは、賃金の実額を示す「名目賃金」の伸び率をしっかり高め、物価の伸び率を下回らない状況を常時つくりだすことだ。

 企業は、春闘の労使交渉を通じ着実な賃上げを実施してほしい。

 実質賃金が上がるのは、2012年に第2次安倍政権が発足してからは初めてとなる。

 もっともアベノミクスは、大胆な金融緩和で年2%程度の物価上昇を実現して、デフレから脱却することを目指してきた。

 物価下落が実質賃金を押し上げる構図は、むしろアベノミクスの限界を示したと言えよう。

 個人消費はいまださえない。

 昨年10~12月の実質国内総生産(GDP)は輸出などの外需に支えられ、年率換算で前期比1・0%増のプラス成長となったが、個人消費は1年ぶりに減少した。

 消費を刺激するには、名目賃金の力強い伸びが必要だ。

 昨年は、名目賃金に当たる現金給与総額が0・5%伸びた。政府の経済政策の成果が乏しい中、企業が曲がりなりにも賃上げを進めたことは前向きにとらえたい。

 大手企業のベースアップ(ベア)の伸びは前年を下回ったものの、サービス業を中心とする人手不足解消のため、中小にも賃上げの動きが広がった。パート労働者の時給も上昇している。

 この流れを後退させてはならない。今春闘では、労働側の連合が4年連続のベア実施を求めているのに対し、経営側の経団連はボーナスや一時金を軸とした年収ベースの賃上げを主張している。

 ここは、月給を底上げするベアを継続し、賃金上昇の実感につなげることが大切ではないか。春闘を主導する自動車や電機業界は、外需で得た成長を内需に循環させる役割を果たしてほしい。

 政府の経済政策の立て直しも欠かせない。企業の投資と収益力強化を促すため、成長戦略の再構築が求められる。

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