欧州委、英離脱後の道筋示す 白書を公表 – 日本経済新聞

 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は1日、英国離脱後のEU27カ国の統合進化に向けた5つのシナリオを盛り込んだ白書を公表した。柱は一部の加盟国が先行して統合を深められるよう統合スピードを多様化するシナリオ。EUの礎を築いたローマ条約調印から60周年を迎える25日にEU首脳会議が打ち出す「ローマ宣言」に向けて、英離脱後のEUの将来像を巡る議論のたたき台にしたい考えだ。

 「我々が(欧州統合の歴史の)パイオニアになり、将来像を作り出す番だ」。ユンケル欧州委員長は1日、欧州議会の本会議に出席し、白書を提出した。白書提出の狙いは、英国の離脱やポピュリズム(大衆迎合主義)の広がりで揺らぐ欧州統合の求心力の回復。2025年までの欧州統合のシナリオを描いた。

 白書では今後のEUが取り得る5つの「道筋」を並立させて提示。どの「道筋」が望ましいかは明示しなかったが、ユンケル氏の“本命”は「もっとやりたい加盟国がもっとやる」とのシナリオ。防衛や治安対策、税制改革などの分野での統合進化を想定する。

 難民・移民危機やテロ対策では、EU加盟国の足並みの乱れで有効策を打ち出せず、EUへの市民の不満を強めて「反EU」感情を広げた。統合に意欲的な加盟国が先行して必要な共通政策を打ち出し、EUの機能不全からの脱却につなげたい考えだ。

 白書ではさらに(1)現状の維持(2)EU単一市場の完成だけに専念(3)EU域外の国境警備の強化など統合を進める分野を今より少なく限定して集中的に進める(4)27カ国がひとつの国家のようにまとまる連邦主義的な統合――のシナリオも提示した。

 ユンケル氏は英国を除くEU27カ国が3月25日にローマで開く特別首脳会議はローマ条約調印の記念を祝うだけでなく、「27カ国からなるEUが誕生する瞬間になる」と強調。同首脳会議でのEU将来像の議論へのたたき台に白書がなると期待を込めた。

 EUは今後、加盟国や市民を巻き込んだ幅広い欧州統合の将来像の議論を喚起し、12月のEU首脳会議で一定の結論を得ることを目指す。19年6月の欧州議会選挙に間に合うよう具体策も実行し、EU不信の払拭につなげたい考えだ。

 ユンケル氏が軸足を置く統合スピードの多様化論は「マルチ・スピード統合」などとも呼ばれ、メルケル独首相らもかねて主張してきた。欧州統合の「原加盟国」を中心に要望論が強い。

 EUはこれまでも全加盟国が一緒に欧州統合を進める前提を維持しつつ、単一通貨ユーロなど一部加盟国が参加する統合の枠組みも導入してきた。ただ東欧などでは、さらなる統合スピードの多様化を認めれば、EU域内の「二流国」として取り残されかねないとの不安が広がる。

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